「カワダウンコーヒー(後)」(2018年08月14日)

ミナンの内陸高原部に植えさせたコーヒーの木の収穫を、地元の監督官は一粒残さずコー
ヒー倉庫に納めさせた。一粒でもこぼすことは許されなかった。だから農民たちは仕方な
くコーヒーの葉を使って飲料を作るしかできなかったのだ。植民地支配の暴虐の証拠がそ
れなのだ、というのがその説明だったのだが、「いや、そうじゃない。」とアンダラス大
学教授は言う。

教授の説明によれば、18世紀末にミナンを訪れた米人商人がコーヒーの実を大量に買っ
た。ミナンの農民たちはそのときはじめて、コーヒーの実が売り物になることを知って愕
然とした、という。

つまりミナンの内陸高原部には既にかなりのコーヒーの木が生えており、地元民はその葉
で飲料を作るだけで、実は余ったら捨てていたという状況がその話から推測される。地元
民が捨てていたコーヒーの実を廉く買い集めた米人商人はきっと大もうけをしたにちがい
ない。

オランダ植民地政庁がミナンの内陸高原部に栽培制度を施行したのは19世紀であり、だ
からカワダウンコーヒーを植民地支配暴虐の証拠にすることはできない、と言うのが教授
の主張だ。コーヒーの葉で飲料を作るのは、ミナンの民衆が自由意志で行っていたことな
のである。

一説では、ミナンの民衆は既に茶の利用を知っていたから、アラブ人がカワの木を紹介し
て、これで飲料を作れると教えた時、茶のようにして作るのだとミナン人が早合点した結
果がそれだと言うのもあるが、やはり半信半疑にならざるを得ない。


カワダウンコーヒーの作り方はいくつかある。まずコーヒーの葉を摘むところからそれは
始まる。
1.十分に成長した新鮮な葉を数枚摘み、2〜3日直射日光に当てて干す。そのあと、直
火の上で焙るか、あるいは乾煎りする。茶色に変色した葉を水に浸して煮る。
2.古すぎず、若すぎない葉を数枚摘み、すぐに竹串でぶつぶつ穴をあける。それを直火
に当てて水分を飛ばす。葉を焦がさないこと。十分乾燥したら手でもみほぐして細切れに
する。容器に入れて沸騰した水を注ぎ、煎じる。
3.抽出水がおいしくなるもっとも状態の良い葉を摘む。それを加熱できる容器に入れて
火の上に置く。葉が完全に乾燥したら、水を張った鍋に入れて20〜30分煮る。水が濃
い茶色になったら出来上がり。

ストレートで飲むのもよし、あるいは砂糖・クリーム・ミルクなどを混ぜてもよし。この
コーヒー茶のような飲み物は、ヤシの殻で作った器で飲むのがもっともおいしいそうだ。
[ 完 ]