「ギリマヌッの旅(前)」(2018年08月21日)

1930年代のバリ島を描いたミゲル・コバルビアスの書き洩らした楽園のひとつがギリ
マヌッ(Gilimanuk)だ。バリ島周遊街道とジャワ島を結ぶ大動脈のバリ島側玄関口がギリ
マヌッ港であり、ギリマヌッの町外れにある巨大なガプラを東に抜けて直進すればバリ島
南岸街道となり、ガプラを左折して北に進めばバリ島北岸街道になる。

ギリマヌッはバリ島北西端にできた半島であり、その北側にある巨大な半島部が西バリ国
立公園で、バリ島誕生以来の自然環境が残されている。イノシシやさまざまな野生動物の
姿を目にすることもできる。

ギリマヌッ半島と西ジャワ国立公園の付け根部分が形作る入江がギリマヌッ湾になってお
り、ジャワ島クタパン(Ketapang)からフェリーでギリマヌッを目指せば、ギリマヌッ湾の
表を通過することもあるため、大自然の野趣あふれる入江の奥を眺める機会にも巡り合え
る。

ギリマヌッ湾の中にはマングローブ林に覆われたブルン島(Pulau Burung)、カロン島(Pu-
lau Kalong)、ガドン島(Pulau Gadung)が並び、干潮時には容易に上陸することができる
し、また西ジャワ国立公園のプラパッアグン(Prapat Agung)山目指してパシルプティ(Pa-
sir Putih)海岸に上陸することも可能だ。木々の梢高く設けられたシロサギの巣や、巨木
の枝をねぐらにしてつり下がっているオオコウモリなども、一見の価値がある。

この海上エクスカーションはギリマヌッの漁民が作っているギリバハリ観光組合で船をチ
ャーターすればよい。乗客6〜8人を乗せることのできる船外機付き木造船は25万ルピ
アでチャーターできる。

まるでマングローブ林観光地としか思えないギリマヌッ湾の島々は、実は2千年前にギリ
マヌッ人が生息していた土地なのである。1964年以来、考古学者や人類学者はギリマ
ヌッ湾地区で3百体の遺骨を砂の下から発掘した。遺体(人骨)はたいてい甕に納められ、
首輪・腕輪・ビーズ・獣骨・陶器や金属の道具類など副葬品と共に埋葬されていた。この
ギリマヌッ人の遺物を紹介しているギリマヌッ人博物館(Museum Manusia Gilimanuk)は
ギリマヌッ湾に近い場所にある。[ 続く ]