「寂れてしまったスンギギビーチ」(2018年08月29日)

商売品の入った木箱を持ってシャムスディン46歳は、くたびれた表情でロンボッ島スン
ギギ海岸にいる。閑散とした砂浜に観光客らしい姿が現れると、かれはそそくさと近付い
て行く。

「ムティアラ、ムティアラ。」木箱を開いて売り物の真珠を見せるが、観光客は興味を示
さずに離れて行く。2018年8月24日の太陽はもう高い。朝からまだ何一つ売れてい
ないのだ。

毎年7〜8月のシーズンには千人を超える国内外の観光客で埋まるスンギギ海岸も、今年
は様変わりしてしまった。地震はシャムスディンの家を崩壊させ、かれの収入の道をも同
時に破壊してしまった。悪夢のような地震が始まる前、かれはこの仕事で一日平均50万
ルピア、7〜8月のシーズンは75〜100万ルピアを稼いでいたのだ。

「仕事を再開して三日になるが、せいぜい一日にひとり買ってくれるくらいだ。」かれは
やるせない口調で語る。なにしろ観光客の姿が消え去ってしまったのだから。砂浜は言う
に及ばず、路上からも、カフェやレストラン、そしてホテルからも消えてしまった。


スンギギ村住民シャッダン40歳は「ビーチは普通夜中の3時ごろまでにぎわっているの
だが、今は夜8時ごろになるともうひっそりしている。」と述べている。サテブラヤッを
ワルンで作り売りしている女性は、「地震の前は一日2百皿売れていたのに、今ではせい
ぜい5皿がいいとこだ。」と言う。サテは一皿2万5千ルピアだ。地震の後、鶏肉はキロ
4万5千ルピアから6万ルピアに値上がりした。しかしかの女は値上げをしない。売り上
げが激減し、利益すら薄くなったが、耐えるしかないとかの女は思っている。

スンギギビーチのカフェ従業員は、例年このシーズンはヨーロッパ人客でにぎわう店内が、
地震後は閑古鳥が鳴くようになったと語る。一日にせいぜい1〜2人しか客が来ない。以
前は何十人も来ていたのが、まるで嘘のようだと言う。店の営業時間は午前11時から深
夜1時までだったが、今や15時から23時に短縮された。毎晩バンドが入っていたが、
今はそれもやめてしまった。

言うまでもなく、ホテルも閑古鳥が鳴いているばかりだ。西ロンボッには106軒のホテ
ルがあり、その大半はスンギギ地区に集中している。

41の客室を有するスンギギプリマスホテルは、地震のために一部建物が損壊したため、
補修工事の最中だ。いつもは8割の客室稼働が維持されていたが、当面その復活は期待し
ようもない。5グループがキャンセルを入れてきた、とマネージャー氏は語っている。