「バリ島シガラジャでイミグレ法違反(終)」(2018年09月07日)

一方、コマン氏の本籍であるブレレン県バンジャル郡チュンパガ村の村役も、二重書類作
成疑惑が降りかかって来るのを怖れて、コマン氏を喚問した。そしてチャールズが使った
出生証書と家族証明書は本物の悪用であったことが判明したのである。

ただし、KTPは常時携帯が義務付けられているため、他人に貸せば自分の身が危うくな
る。日常社会活動でKTPは必要不可欠なものであることから、それを持たずには普通の
日常活動が行えなくなる。だからドゥサッはKTPを貸せという異常なねだりをコマン氏
にしなかったのであり、それだけは偽造せざるを得なかった。

日々ビジネスを行っているコマン氏がKTPなしで済むはずがない。村役はコマン氏がオ
リジナルのKTPを持っていることを確認している。つまりは、ドゥサッがシガラジャイ
ミグレーション事務所旅券申請受付窓口に提出したKTPは偽造品だったということだ。
偽造品の場合、データは他人のものをそのまま使うが、写真だけはニセモノ本人にすり替
えるのが普通で、そうしなければ顔が違うからすぐに疑われてしまう。

マスメディアにあるこの事件に関するさまざまな報道記事では、この事件は最初にKTP
の写真と申請者の顔が似ていないために担当官の疑惑を招いたと書かれており、一体どち
らが本当なのか読者はとまどってしまうことになる。このような不一致はインドネシア報
道界では当たり前のことのようだ。報道記事の内容の何割かは記者の想像で書かれている
というのが、どうやら世界共通の現象らしい。そんなものを読まされて真実と思い込んで
いる読者こそ、いい面の皮だろう。

何事によらず、鵜呑みするというのは味わいを放棄しているのと変わりがない。もっと己
の舌の感覚を信じて、ニセモノを食わされないようにしなければ、精神の健康は維持でき
ないということに違いない。すべからく、巨大なものを信頼すると己を失ってしまうとい
う世の習わしを思い返すべきだろう。それとも、若者の証明となっていた価値観は既に過
去の遺物として時間の果てに流れ去ってしまったのだろうか?

逮捕されたチャールズとドゥサッはシガラジャの拘置所で裁判を待つことになる。201
1年法律第6号イミグレーション法第126条c項はこの犯罪に対する刑罰を最長5年の
入獄と最大5億ルピアの罰金としている。[ 完 ]