「インドネシア植民地化はイ_ア人のおかげ(終)」(2018年09月10日) 上に挙げたさまざまな数字を見る限り、インドネシアは自民族の軍隊と警察に征服されて いたと確信を持って言えるにちがいない。オランダ人たちはインドネシアのどこにでも家 族を伴って住むことができたのである。プリブミの兵隊と警官はあらゆるところにいたの だから。 < 薄弱な社会資本 > VOCがやってきて平和的に迎えられたこと、植民地支配者と地元エリートの協力関係、 民衆の知的階層のほとんどが植民地支配者を支持し、その一齣になって働いたこと、など が数百年間の植民地支配を確固たるものにしてきた。それらの事実はヌサンタラ住民が持 っている社会資本の薄弱さと無縁でない。 社会資本の薄弱さは次のような特徴を持っている。社会は分裂して少なくとも三つのクラ イシスに落ち込む。相互不信クライシス、感情移入クライシス、ヒューマニズムクライシ スの三つだ。VOC時代初期に起こった薄弱な社会資本が原因のクライシスは、いまだに 継続しているように見える。 その中身を見てみるなら、信頼のクライシスはわれわれを同一民族であるというのに相互 不信に誘い、感情移入クライシスは同一民族であるわれわれの兄弟たちが陥っている境遇 への鈍感さや無関心をもたらし、ヒューマニズムクライシスは人間として他者と愛し合う ことを妨げている。 文化面におけるその三つのクライシスの結果、昔から現在に至るまで民衆は、アルベルト ・メルッチが個人アイデンティティのホームレス性と呼んだアイデンティティクライシス の似たような境遇に陥ったままになっている。 民衆は価値のオリエンテーションと自治を喪失しており、全体主義的政府行政と社会組織 のシステムは、植民地支配者の到来以前から植民地時代そして独立以降を通して、あらゆ る形態の創造性・自立・自己効力感そして社会の中での一体感に口輪をはめてしまった。 わずか数百人の兵隊で植民地支配者はヌサンタラを征服したのである。 インドネシアは73回目の独立記念日を祝ったばかりだ。しかし73年も経過したいま、 われわれはいまだに民族の非一体感をぬぐい切れないでいる。VOC時代初期から先祖代 々相伝されてきた、互いに非難し合い、互いに相手を転倒させようとし、互いに誹謗中傷 し合うことをいまだに続けている。 われわれは経済成長を実現させ、インフレを抑制し、インフラを建設し、教育レベルを向 上させる力を持っているにもかかわらず、民衆が持っている社会資本が薄弱であるとき、 この民族に大打撃をおよぼす時限爆弾がその背におぶさっているのだ。かつて起こった植 民地支配が、小集団による別の形態で繰り返されることを防がなければならない。おめで とう、独立インドネシア。[ 完 ]