「労働者の労組離れ」(2018年09月24日)

全国的に企業内労組が勢いを弱め、労組活動は個別企業を離れて大型組織へと移りつつあ
るようだ。労働者の権利を守り、育成するための組織でありながら、その力も業績も不十
分だという勤労者たちの社内労組に対する評価が、そこに反映されているにちがいない。
労働省2013年データでは、労組同盟6団体、労組連盟92団体、社内労組11,85
2で、組合員は全国に340万人いた。2018年8月には、14労組同盟、120労組
連盟、7,294社内労組、組合員270万人に変化している。

社内労組数と社内労組組合員数の減少は検証されている事実だと労働省労使関係育成労働
社会保障総局労使関係制度協力局長は述べている。実態としては、企業が最低賃金の低い
地方に移転する傾向が増加し、移転するとそれまであった社内労組はそのまま立ち消えと
なり、一方、会社側は社内労組の名前だけを移転後の会社に移すものの、実体はほとんど
消滅しているというのが裏側にある状況らしい。


労働運動が政治ツールに使われているのはインドネシアの長い歴史が如実に物語っており、
その傾向はいまだに顕著に見られる。労働者全国組織は政党が使う政治戦力の一部と化し、
純粋な労働運動から逸脱したものになる傾向が高い。ましてや組織内での方針や派閥によ
る対立が組織の分裂を分割に進めさせることも、政党間の競争がからみこんで実現を容易
にさせている印象がある。労働法の趣旨を形にせんがために会社側が率先して御用達労組
を作った経緯から社内労組の多くが誕生したことも忘れてはなるまい。

インドネシア全労働者機構(OPSI)事務局長によれば、社内労組から労組同盟に至る
まで組織内での分裂を起こすところがあって、労働者にとって反生産的な問題になってい
る、とのことだ。

しかし情報がますますオープンに迅速に拡大する傾向を強めており、また民主化を監視す
る機関も増えているため、会社経営者はイメージ作りをはかって従業員への待遇改善に努
めるようになっており、労働者はそんな状態に甘んじてコンフォートゾーンに浸っている
ことに満足する傾向が出現している、と事務局長は指摘している。


労組組合員の減少にはふたつの理由があるとアイルランガ大学法学修士課程教官は語る。
そのひとつは労組が労働者福祉の役に立っていないという諦観であり、労働者が持ってい
る種々の要求を労組は本気で相手にしていないという絶望感だ。

もうひとつは、労組内の一部分子が組織を別の目的に向けさせていること。たとえばある
労組がタックスアムネスティの司法審査を要請したが、そのようなことは労働者の福祉に
直接的なかかわりを持つものでない。他にも、労働界の活動家の中に政治の舞台に躍り出
る者がいて、国会議員総選挙に立候補している。それらの要因が労働者に、労組に対する
しらけムードを醸成しており、労働者の組合離れが進行している、と教官は分析している。