「詐欺の手口は日進月歩」(2018年09月27日)

TKI(海外出稼ぎ者)は女性のほうが多い。国営事業である海外出稼者派遣の通常の出
発ルートを通るだけでも、かの女たちのほとんどは大勢の関係者にたかられるのが普通で
あり、ましてや外国の高い所得水準に沿った収入を得て帰国してくるかの女たちを食い物
にしようと待ち受けている男たちは数知れない。

その社会的構図は女が男に尽くすものという社会通念の延長線上にあるのが明白であり、
男が女のヒモになろうとする精神傾向は男優女劣文化のたまものだと言えよう。男が自己
の分を弁えて誠実に働き、女と対等の立場で生活を打ち建てて行こうとする価値観よりも、
支配被支配関係の上に立って従属者をコキ使うありかたのほうが男の優秀さを示している
という社会的価値観がそのたまものの結末ではあるまいか。支配被支配関係を形式面から
とらえると間違いを犯すだろう。支配され操られている人間が常に恫喝や威嚇のみを原因
として行動しているわけではないのだから。


サウジアラビアへ出稼ぎに行って12年間女中として働き、去る8月にヨグヤカルタ州バ
ントゥル県スンダンサリのダダッボン部落にある自宅に本帰国したソリカさん48歳を、
9月のある日、ひとりの男が訪れた。

男は自分をヨグヤ市内にある海外出稼ぎ者派遣サービス会社の従業員だと紹介したが、会
社名も自分の名前も言わなかった。
「TKI用にサウジアラビアが支給する保健器具を包装するだけの仕事があって、自宅で
行えて週給75万ルピアになる。奥さん、やらないかね?」男はそんな話をした。

願ってもない話だわ、とソリカさんは喜んだ。ところが男はサウジへの出稼ぎ経験者じゃ
ないとだめだ、と言う。そして奥さんの出稼ぎ経験が本当であることを証明するために、
サウジ通貨のリヤルとサウジで買った装身具を示して見せてくる必要があるので、わたし
に預けてくれ、と男は言った。

ソリカさんが手持ちのリヤルを少し見せると男は、1千5百リヤルくらいあれば週給12
0万ルピアになると言う。乗り気のソリカさんは1千5百リヤルとサウジで買った純金製
指輪とネックレスを男に渡した。それらを受けとった男は受領証を紙に書いて渡し、今度
は仕事に必要な器具類を持ってくるから、そのときこの預かり品も返します、と言ってそ
の家を去った。


しかし待てど暮らせど、その男は戻ってこない、というのが世に数ある詐欺事件の結末だ。
届を受けてバントゥル県警が捜査を開始し、マグランに住むA47歳が容疑者として逮捕
された。警察の発表によれば、Aは三年前からその手口の詐欺活動を開始し、サウジ経験
のある女性TKIに的を絞って行っていた。そのターゲットなら間口はきわめて広いこと、
請け合いだ。

警察はAの車に異なるナンバープレートが5種類用意されていたのを発見し、Aの行動範
囲がたいへん広かったことを知って関係各地の警察に、被害者がいる可能性が高いために
調査するよう依頼している。