「Z」(2018年10月05日) ライター: インドネシア大学文化科学部教官、カシヤント・サストロディノモ ソース: 2010年10月1日付けコンパス紙 "Z" Zの文字を持つ外来語はそのままZを使い、また発音するように、国語センターは決めた。 そのためzenith, zirconium, zodiacはインドネシア語としてzenit, zirkonium, zodiakと 綴られる。第三版よりはるかに分厚くなった国語センターのインドネシア語大辞典(KBBI) 第四版にはzで始まる単語が184採録されており、前版の82から激増している。語彙 の豊富さの向上という点で称賛されるべき成果だ。 現実の言語使用の中で、zは言語センターの方針通りに常に綴られまた発音されるとは限 らず、派生形が出現するのが普通だ。たとえばジャワ語話者の一部がもっとも近いと見ら れるjや、あるいはdもしくはsをzに置き換えている。ジャワ語がzの音を持っていな いことが、その明白な客観的要因になっている。外国文化、特にアラブとオランダ、が渡 来したときにzが入って来た。こうしてzaman はjaman と書かれ、ロンゴワルシト(Rang- gawarsita)が著作の中にjaman edanと記載したのである。オランダ語のzonderはsonder に変化した。ロックグループは自分のグループ名称をzamrudとしないでjamrudとした。 友人のひとりはhorijonを拝借に来た。horisonあるいはKBBI式にhorizonという雑誌の ことだ。 アラブ文字dzもジャワ語訛りの濃いものになる。dzikir(KBBIでzikir)はdikirもしく はjikirになり、adzanもadanやajanになる。正午の礼拝であるアラブ語dhuhur(zuhur) もjuhurとなり、ジャワ語化されたときにもっと遠ざかってlohorとなった。アラブ語の月 の名称Dzulqa'dah(KBBIでZulkaidah)はジャワ暦の中でDulkangidahと発音される。 上述のジャワ語における文字と音の変化はz音のジャワ語音韻体系への同化現象を示して おり、インドネシアの他地方でも状況は似たようなものだろう。 しかしアルクルアンの章句を唱えるとき、語義を確定させるためにz音を変化させること は許されない。聖なるアルクルアンの章句を唱える者たち、たとえばサントリ層、がz音 の発音に流ちょうなのはそのせいである。個人名にrizkiの語を使うのは、命名者がよりイ スラミックであり且つその語の綴り方を承知していることを示している。一方(sri) rejeki という名前は多分、クリフォード・ギアツが分類したプリヤイアバガン(priyayi abangan) 層のお好みだろう。zの選択はジャワの社会階層間モデルにおける言語傾向に関わってい るのだろうか?ギアツはその問題を見落としている。 KBBIのzで始まる単語のほとんどすべては、アラブ語・オランダ語・英語・自然科学 系の術語などから成っている。アルファベットの最後の文字を使ったオリジナルの単語を インドネシア語の世界で見出すのは難しい。多分漫画家や戯画作家が睡眠中を描写するた めに使うZzzzzだけが該当しているようだ。zがたくさん並べば並ぶほど、睡眠はより深 いものを表している。 突然わたしの記憶に、スリムラッ(Srimulat)劇団のシニアコメディアンだった故アスムニ 氏が浮かび上がって来た。家庭プンバントゥに扮したかれは、いつも来客にこう尋ねた。 「Mau minum susu atau zuzu?」何が違うのだろうか? susuは薄いミルクで、zuzuは濃いミルクなんだとさ。