「交通違反監視カメラ(後)」(2018年10月09日) 首都警察交通局が用意しているE-Tilangと呼ばれるアプリでは、違反罰金納付が容易に行 える。運送事業者にとっては便利なシステムだろう。このシステムでは、次のようなメカ ニズムが回転する。 1.交通警官が違反切符を切る。 2.警察がE-Tilangアプリに違反データをインプットする。 3.違反者にBRIバーチャルアカウント(BRIVA)が与えられる。BRIVAコードは罰金 納付の際に必要になる。 4.違反切符番号と罰金額が自動的に違反者のアプリに送付される。 5.罰金納付は銀行で、あるいはモバイルバンキングで行われる。 6.違反切符を切った交通警官のアプリに罰金納付確認データが送られる。 7.上のプロセスが終わると、違反者は違反時に交通警官が押収した証拠品の返却を受け ることができる。 8.法廷が違反内容と罰金の最終判決を下す。判決罰金額が小さかった場合、銀行は違反 者にSMSでそれを通知する。 消費者保護財団役員は交通違反取締の新方式が市民の行動文化パターンに変化をもたらす ことを期待しているとコメントした。秩序ある道路交通がテクノロジーにサポートされて 育成するための突破口になってほしい、とかれは次のように述べている。 「効率面から言えば、交通警官の数は限られており、無制限に人数を増やすことも人件費 の面からむつかしい。その一方で交通違反はマスで行われているため、バランスが取れな い。この新方式に対する評価は、違反の摘発件数などで測定されるべきものでない。市民 の路上交通における秩序と規律がどれほど向上したかがその成功度の物差しとされるべき だ。」 交通警官がいて、見られているから、捕まるから、そのときだけ規律を守るが、見られて いなければやりたい放題という精神性から、常に監視されているという心理によって定常 的に自主規制を自分に加える精神性に移行していくことを新方式が可能にするなら、路上 の、ひいては社会の文明度が高まることになる。 それはそれでよいのだが、運用プロセスの中に、警察内部に設けられたひとつの密室で違 反かどうかの判定が下される部分が残されており、違反者によっては見逃そうというよう な対応が行われるなら、新方式に対する信用は地に落ちることになる。 国民の面従腹背傾向は植民地時代に種がまかれ、独立後も矯正されることなく継続してき た。その原因の一端が独立共和国の支配権力が示したビヘイビアにあるのは言うまでもあ るまい。それが続けられるかぎり、民族の文明度もなかなか高まらないのではあるまいか。 [ 完 ]