「ジャカルタ借家借室事情(前)」(2018年10月22日)

首都圏の住宅需要は増加の一途だ。ジャカルタはほとんど飽和状態であるため新規開発が
困難であるばかりか、地価が高いので購入も賃貸も高い。必然的にひとびとは郊外に住居
を求めるようになる。

それでも職住近接を求めるひとびとは都内の廉価な借家借室を探すし、財布と相談しなが
ら可能な場所を得ていくのである。巨大なモールが都内のあちこちにできると、そこで働
く数千人のひとびとの多くは、モールの裏手に自然発生的にできあがった、まるでスラム
のような住宅地区で借家借室を得る。モールができる前は中下層住宅地区だった裏手のエ
リアは、山のような住宅需要が発生すると自宅を借家借室に変えて商売に励み出す。中に
は家主がよそへ引っ越すケースも稀でない。そのような場所を訪れる外国人はほとんどい
ないだろうが、迂闊に車で入って行けないような場所に豹変してしまうのである。


70年代の借家はrumah kontrakanと呼ばれ、数年間の借用契約をし、家賃を前払いする
のが普通だった。昨今はrumah sewaという言い方も一般的になっていて、長くても一年
契約というのが普通なようだ。

一方、借室はkosと呼ばれる。これは昔から同じ名称が使われているが、70年代のコス
は普通の民家の一室を借りる下宿の雰囲気が強かった。つまり家主の生活域の中で借室人
が生活するということだ。家主と店子の双方でプライバシー尊重意識が時代と共に強まっ
て来れば、その形は変化せざるを得ない。その結果がアパート型やホテル型の現在のコス
になっている。

昔コスを探すのは口コミや住宅地区を回ってコスの貼り紙を探すやり方だったが、今では
インターネットで居ながらにして候補が上がって来る。次のようなサイトは借家借室から
売家までさまざまな不動産情報に満ちている。Mamikos, Cari-Kos, Info-Kos, Sewakost, 
Serumah, iBilik, UrbanIndo, lamudi, rumah123。

情報は実に得られやすくなったのだが、反対に自分が希望する条件に合うところに遭遇す
るのが困難になっているという面が見られるようだ。金が潤沢にあれば困難はないわけで、
立地条件や設備と家賃の組み合わせがほとんどのひとの頭を痛くさせるファクターになっ
ているらしい。

それを乗り越えて住み始めても、今度は家賃値上がり問題が頭痛のタネになる。たとえば
西ジャカルタ市で15年前、エアコンなしの借室は月額35〜50万ルピアだった。今そ
の条件だと月額80〜90万になる。エアコンと浴室付きなら月額150〜300万で、
中には電気代が別請求されるところもある。[ 続く ]