「ボゴール市内の観光スポット(2)」(2018年10月23日)

バタヴィアから南に向かう街道は、野焼き、果樹園、地所、ゴム園などの間を抜けて張ら
れた一本のロープのようだ。それは西ジャワ内陸部の高原地帯にわれわれを導いてくれる。
そのときひとは必ず、緑滴るプリアガン地区の出発点となるバイテンゾルフを通過するこ
とになる。

そこで街道は分岐する。更に南へ進む道はチチュルッやチバダッを経てスカブミに向かい、
東への峻嶮な道はチパユンからプンチャッを越えて高原の町チアンジュルに、そして西方
への道は人口希薄なバンテン地方へ向かう。東インドファッションにおけるバイテンゾル
フはスイートリトルタウンだ。それはいつも清潔で爽快な気分をもたらし、特に雨上がり
にはまるで町が洗濯されたような印象を与えてくれる。バイテンゾルフはよく雨が降るの
だ。


雨季が来る前のバタヴィアの暑さの下でわれわれは、黒雲が南に流れるのを見ながら、
「バイテンゾルフは雨だろうな。」とよく語り合ったものだ。時にバタヴィアが救いがた
い状況を示し、全自然界が日干しにされて枯れ葉のように怠惰になり、草もしおれて地面
が割れると、帰宅した父はこう言った。「みんなで新鮮な空気を吸いに行こう。」

行く先はバイテンゾルフに決まっていた。ホテルベルビューに長距離電話を入れ、午後三
時ごろにレイスターフェルを取ったあと、玄関のファサードに車がやってくる。みんなは
ホリデームードで車に乗り込むのだ。父は心配事などすべて置き去りにして、道中歌い続
ける。父の歌声、乾ききった大地、かすむ山々、バイテンゾルフ到着、ホテルベルビュー、
客室からの眺め、それらがわたしの子供時代のもっとも幸福な思い出だった。そこには町
のすべてが含まれていた。

パアル36の水道橋を越えたらバイテンゾルフだという理解をわれわれはしていた。そこ
へ着くはるか以前から、空気はひんやり感じられていた。時には道中で大雨に会い、バイ
テンゾルフに入ったころには木々がまだしずくを垂らしていることもあった。そんなとき
はあらゆるものが大地と水分と草の匂いに包まれ、まるではじめて深呼吸したかのように
感じられた。しかし町中にあるものを目にするには、まだまだドライブを続けなければな
らなかい。[ 続く ]