「ボゴール市内の観光スポット(3)」(2018年10月24日)

クナリの街路樹にはさまれた大通りの先端に建てられたオベリスクを通り過ぎる前に、総
督の真白なパレスが目に飛び込んでくる。薄緑色をした広い芝生の上を鹿が歩いている。

そのもっと向こう側に有名な植物園がある。反対側にはパームやシダやツルの裏側に広く
大きな邸宅が身を潜めている。それらは80年代から90年代にかけて建てられた古い屋
敷だ。そこを過ぎればもうすぐだ。われわれは右に折れ、道路はそのあと左に曲がってパ
サルの方角に向かう。そしていきなり、ホテルの建物が目の前に現れる。何百もの小さな
黄色い花が咲き乱れる芝生、そして白亜のホテルメインビルが横たわり、その向こう側に
サラッ山がそびえたっている。

ホテルの玄関でマンドルがわれわれを迎えてくれ、二階の客室に案内してくれる。部屋の
窓からはチリウン川とサラッ山が見渡せる。夕暮れ迫る部屋のベランダで茶が供されたあ
と、ほどなく夜の帳に包まれる。しかしそれより早く、何百もの光が地上にきらめく。水
浴する女や子供たちの声、そして夜遅くまで外界を賑わす男の高い歌声。ほとばしる水流
の音がいやが上にも冷気を高め、都会を離れたわが身を思い出させてくれるのである。

早朝は駅からの汽笛が目を覚ましてくれる。蒸気機関車と客車の列が時おり立てる轟音が
かなたから伝わって来て、それがゆるやかにカーブを曲がって消えて行く。響きは徐々に、
しかも確実に、弱まり、そして消えていく。そのあとは再び空気の中に水流の音が満ち溢
れるのだ。ベッドから出て外を眺めれば、木々や川の上にもやがたなびいている。白い影
のようにそびえていたサラッ山は、朝陽に射られて黄金色に輝き、裂かれたもやが長く白
い幟のように薄れて行く。それがバイテンゾルフの、澄んで明るく輝く、偉大なる朝なの
だ。

バイテンゾルフの町自体は、人工的デザインと自然が入り混じった、野放図に作られた公
園に似ている。広くまっすぐな大通りと、狭く曲がりくねった小路。庭園にいる感覚は消
えることがない。家屋は常に緑の中に潜んでいるように見える。背高のクナリの木の下で
それらは古く湿っており、壁には緑の斑点。街灯のいくつかは前世紀の遺物だ。夜になる
とそこはほの暗く、何時間も前に雨がやんだにも関わらず、時に水滴が落ちて来る。
[ 続く ]