「工業用機材はブルストゥル市場(後)」(2018年10月25日)

この一帯で取り扱われている商品は多岐に渡り、ネジ・釘・ボルト・ナットの類から、ワ
イヤー・チェーン・セラミックカッター・電動鋸・発電機・コンプレッサー・ホース・金
属シート・パイプ・諸金属資材・大工道具・レンチや作業ツール類・ハサミやカッター・
旋盤・研磨機・溶接機・ゴムシートやクッション等々、町工場で必要とされるありとあら
ゆるものを見つけることができる。

価格は他の場所でのものよりも50〜70%廉いことから、消費者はそこへ買いに行くほ
うを選択する。何しろそこに入っている店を歩き回って探せば、自分の必要にもっともマ
ッチする品物を手に入れることができるし、おまけに値段も最初から廉いのだから、それ
は理の当然だろう。爆買いするなら、タワルムナワルに色を付けない店主はいない。必然
的に単価ももっと下がっていく。

どうして廉いのか?店主のひとりが説明したところによれば、そこは輸入者が直接販売し
ている店が多く、そこで買えば国内の流通ステップを二段階くらい飛び越えることになる
からだそうだ。おまけに大半を占める中国製商品を、輸入者は中国の生産者から直接仕入
れているそうで、流通マージンを極力カットすることがかれらの信条になっているらしい。

廉く仕入れて量販するのが華人ビジネスの奥義であるにちがいない。このパサルのサイズ
は極めて大きく、しかも消費量が巨大だとその店主は語っている。


ここはコタ駅から近いという地の利がある。駅からの距離はおよそ百メートルで、一回ア
ンコッに乗れば、歩く距離はもっと減る。コミュータライン沿線の消費者にとっては、便
利な場所だ。購入品が少なければ同じルートで引き返すし、手で運べない物を買ったなら、
レンタルピックアップトラックがいくらでも客待ちしている。インドネシア文化にある便
利さは、だれが采配を振って割り当てるということなしに、サービス業者が自分の意志と
費用とリスクで利の興るところに集まって来て、自分の業種のサービスを直接消費者にオ
ファーする点に見ることができる。

品物によるが、タクシーやバジャイに運ばせることも可能だ。バジャイでクラパガディン
辺りまで運ばせると10万ルピア程度、ピックアップをチャーターすればブカシまで4〜
5百万ルピアだそうだ。

もっと便利なのは、金属資材の加工をしてくれるサービス業者がその一帯にたくさんある
ことだ。カッティングから溶接、成形に至るまで、たいていの作業を行ってくれる。

販売店が巨大な標準サイズの資材を有料でカットしてくれるのは常識だとして、その資材
を成形して自宅のどこかに装備したいとなれば、そういう業者をその一帯で探すことも不
可能ではない。これもインドネシア文化にある便利さの一形態であり、せっかくインドネ
シアにいるのだからこの種の便利さを享受しないではもったいないように思われるが、交
渉上手のひとより高く買わされたと言って被害者意識を丸出しにするような方には、無理
なことかもしれない。[ 完 ]