「数学ができないインドネシア人」(2018年11月27日)

インドネシアファミリーライフサーベイでは国民の数学能力のチェックが行われている。
その結果によれば、小学校2年生レベルの問題を正しく解けなかった国民は小卒学歴者の
85%、中卒学歴者の75%、高卒学歴者の55%を超え、小学校4・5年レベルの問題
が解けた者はほんのわずかだった。

2000年のサーベイ結果では、小学生の正答率は31.8%、中学生は42.3%だっ
たものが、2014年では小学生26.5%、中学生38.7%に低下している。

2016年の小学生算数能力調査では、能力優秀の判定を得たのは2.29%、必要限度
を満たしている者は20.58%、限度を満たせない赤点組が77.13%だった。

2017年にジャカルタとヨグヤカルタの中学8年生を対象にして行われた読解と数学の
能力調査では、総平均点が100点満点の27.5点しかなかった。

2018年には、インドネシアの学校生徒の数学能力が12年間で10.5%しか向上し
ていないことが報告されている。

国際調査でも、低下傾向が目に付く。1999年のTIMSSではインドネシアの生徒の
スコアが403あったものが、2012年の際には386に低下した。


教育政策研究センターはインドで開発された算数読解自立測定システムを使って、スラバ
ヤ・バンドン・メダンで調査を行っている。北スマトラ州の一部小中学校生徒263人を
対象にした調査結果によれば、小学1年生の27%が単位を理解できておらず、中学生で
も5%が理解していなかった。割り算については、小学校4年生で目標レベルの理解がで
きている生徒は7%しかいなかった。ただし、学年が上がるにつれてその数値は上昇し、
中学1年生では22%に達した。ところが中学2年〜3年と上がっていくと、反対に比率
は19%〜15%と低下している。

数学の問題を正しく解くには、何を尋ねている問題なのかを正しく把握するための読解力
が関係している。読解力を持ち、抽象思考ができ、論理思考ができることが、数学能力を
高めるのに必要な条件になっている。そして教師を含む周辺の大人たちが、つまりは社会
が持っている価値観と日常生活に関わっている慣習が、それらの必要条件を生徒の内面に
伸ばして行く鍵を握っていると言っても間違いではあるまい。

教育関係者はたいてい、インドネシアの児童は決して馬鹿ではない、とコメントする。具
象思考から抽象思考へと導いて行くために、教師は、そして大人たちはそれを目指した助
言と指導を児童に与えて行かなければならない。論理思考にも同じことが言える。

算数・数学能力を頭の良さを測る物差しに使うのは、時代遅れの悪習だろう。われわれは
ここにも、文化が落としている影を見出すのである。それは多重言語能力を頭の良さの指
標にするのとまったく同じ悪習にすぎない。