「性犯罪被害者の犯罪者化(2)」(2018年12月04日)

かれらが女性の存在と自立を踏みにじって、いかに相互利益と父権制を擁護し合っている
かというありさまをバイッ・ヌリル事件はわれわれに赤裸々に示すことになった。バイッ
・ヌリルに対する刑罰は、本当はあらゆる形態の差別とこれまで女性にまとわりついてい
た暴力に抵抗しようとしている全女性に対する抑圧と侮蔑の行いなのである。

< 非対等関係 >
オランダ植民地支配の遺産としてわれわれが引き継いだ刑法典の中にセクシャルハラスメ
ント(インドネシア語はpelecehan seksualで、これは性的侮蔑を意味し、差別よりも根源
的な人間観を踏まえている=訳者)という言葉が見つからないのも問題なのだ。用いられ
ている言葉はわいせつ行為(perbuatan cabul)であり、しかも刑法典はその言葉の語義を示
していない。

インドネシア語大辞典(KBBI)ではperbuatan cabulの語義を、卑しく穢れた、礼節
に欠け、妥当性のない行為(倫理と礼節に反する)としている。はるか以前に法専門家た
ちはそれを、性的関連性における卑しくて礼節や妥当性に欠ける行為と定義付けている。

セクシャルハラスメントという言葉について言うなら、その本質は望まれていない関心を
支配関係の下位者に向けて与えることを禁ずる点にあり、性的侮蔑行為(perbuatan pele-
cehan seksual)に該当するものは刑法典第294条に見出すことができる。この条項では、
実子・義子・養子・自分の監督下の子供に対するわいせつ行為を行った親に対して、最長
7年の入獄刑を定めている。第294条第2項では、刑務所・国有機関・教育機関・孤児
院・精神病院・社会施設の運営者・医師・教師・職員・監視人・用務員がそれらの施設に
通ったり収容されている者に対してわいせつ行為を行った場合の刑罰を定めている。第2
94条の主要ファクターは支配関係の下位者に対する犯罪という点にある。

性的侮蔑という言葉はジャカルタ法律援護機関とカリヤナミトラが1992年に共催した
セミナーの中で社会化した。主催者としてわたしとインドネシア大学社会学政治学部犯罪
学教官シャリファ・サバルディン博士がセクシャルハラスメントに適切に対応するインド
ネシア語を探した結果だった。当時セクハラという言葉はクラレンス・トーマス氏の米国
最高裁長官選考に関連してマスメディアの流行語になっていた。

メディアの中にはperundungan seksual(perundungan は英語のbullyに該当する=訳者)
を使うところもあったが、礼節や妥当性から外れて女性を卑しめる行為が示す特徴や行為
者がセックスサービスを期待してそのターゲットにされた女性の関心を引こうとするよう
な点に着目した結果、性的侮蔑という言葉がセクシャルハラスメントに対応するインドネ
シア語としてふさわしいと判断された。[ 続く ]