「性犯罪被害者の犯罪者化(3)」(2018年12月05日) クラレンス・トーマス氏の最高裁長官選考では、法律家でブランダイス大学法学教授のア ニタ・ヒル氏が反対の舌鋒を向けた。かの女は自分自身がクラレンス・トーマスのセクハ ラ被害者だったことを世の中に公開した。そのときクラレンス・トーマスは雇用機会均等 委員会でかの女の上司だったのである。長官候補者選考の優先的にして重要なステップは パブリックアセスメントであり、それが以後の審査を実施するかどうかを決めるべきもの だというのに。 同じことはドナルド・トランプ大統領下の最高裁長官選考でも起こった。ブレット・カバ ノー氏の選考でクリスティン・ブラジー・フォード氏が反対の声をあげた。かの女はブレ ット・カバノーにレイプされたと表明したのである。 それに関連してアニタ・ヒル氏はニューヨークタイムズに論説を書き、ブレット・カバノ ー事件はクラレンス・トーマス事件とパラレルであって、米国民は30年前の誤りから何 も学んでいないと述べている。ジョージ・ブッシュ大統領もトランプ大統領も、かれらを 最高裁長官にした。 < 良い学習例 > われわれにとって2004〜2009年任期国会倫理協議会が行った良い前例が本当は存 在している。秘書にセクハラどころか、執務室でレープした国会議員のひとりが議員を解 消されたのである。残念なことに、刑事訴訟も民事訴訟も続けられなかった。警察の事件 立証が困難だったからだ。 性暴力への抵抗闘争はグローバル闘争になっている。MeToo運動は、父権制と男性優位文 化の強固な壁が強いていた沈黙のゆえに過去に埋もれていたいくつかの事件を掘り起こす のに成功している。女性をセックスの対象という位置に置いている文化のために、男は女 性に対して暴力やセクハラを行う権利を持っているように感じているのである。 それどころか、シンボリックな暴力はあたかも女性自身の動脈にまとわりついているため に、自分自身にからまっている暴力が女性に自覚されないでいる。インドネシア社会が 「望まれていない関心」の意味するところを理解していないことは、想像にあまりある。 被害者女性の証言は往々にして信用されず、それどころかでっち上げと見なされる。それ は「望まれていない関心」を拒絶した大勢の女性たちの体験が証明している。拒絶したが ゆえに、気位が高い、己を弁えない、美人だとうぬぼれている、などと陰口をたたかれ、 その女性が未婚や寡婦だとかの女への嘲罵は膨れ上がる。[ 続く ]