「ボラ(3)」(2018年12月05日)

美しいボラを愛するインドネシア人を自称するサムスディン・ブルリアン氏は、玉になっ
ているのは美味いものだと言う。
インドネシア語のboluはポルトガル人のboloだそうで、boloはケーキを意味しているが語
源は玉に通じているらしい。インドネシア料理のバソbaksoをオランダ人はフレイスバレ
チェスvleesballetjesと呼ぶ。英語ではミートボール、つまりボラだ。

球のような風船は昔イタリアでballone、つまり玉ballaの大きいやつを意味した。現代イ
タリア語ではpalloneとpallaに変わっている。ともあれ、それがオランダ語に入ってbal-
lonとなり、インドネシア人がそれをbalonにした。古代ローマでは選挙の投票に小玉を使
い、それをballottaと呼んだ。投票箱は英語でballot boxと言う。インドネシア語もkotak 
balotだ。

フランス人は玉をプロットpelotと言う。小玉の集まりをプロトンpelotonと呼び、軍隊編
成に使って小隊を意味した。オランダ人もそれに倣ったが、インドネシア人はプレトン
pletonに変えた。プロットが英語のペレットpelletになったのは周知のことで、インドネ
シアにもpeletが持ち込まれた。この意味のペレッは粒上にした家畜や魚の飼料で使われ
ることが多い。ジャワ語由来のペレッは意味が違うからご用心。

フランス語のバールbaleもインドネシアに来てbalとなった。インドネシアでバルbalは布
をぐるぐると巻いて巻物にしたもので、巻物を数える単位にも使われる。

小粒で丸いものにピルもある。英語はpillだがフランス語はピリュルpiluleで、ラテン語
のピルラpilulaを語源とする。玉を意味するピラpilaに指小辞が付いたものだ。

ラテン語ブラbullaは丸いものを意味している。球形や円形の形状を意味するインドネシ
ア語もブラッbulatなのだが、はたして関係はあるのだろうか?サムスディン氏によれば、
イタリア語のブレッティノbulletinoはブラに由来し、フランス語のビュルタンbulletin
になってそのままオランダ語に持ち込まれ、インドネシア語のブレティンbuletinと化し
た。チベット語のボラはプルpuluで、イギリス人のポロpoloに関わっているのやらいな
いのやら。

インドネシア人はボーリングをボリンbolingと発音する。英語のボーリングbowlingから
来たのかオランダ語のボウリングbowlingなのかはっきりしないが、鉢やどんぶりでなく、
偶然にせよ球により近づいているのは面白い現象だ。

ボーリングの元祖である九柱戯はオランダ人が北米で流行らせたもので、ワシントン・
アーヴィングの名作リップ・ヴァン・ウィンクルにも、主人公を浦島太郎現象に引き込
む情景作りの中に取り上げられている。[ 続く ]