「ポルノ、其二(前)」(2018年12月13日)

ライター: インドネシア大学文化科学部名誉教授、ベニー H フッ
ソース: 2006年3月10日付けコンパス紙 "Erotisme dan Pornografi"

特定集団の中や日常会話でポルノグラフィの話しがなされても、重要なことは何も起こら
ない。ところが法案に関連してポルノが語られると、激しい論議を巻き起こす。ましてや
pornoaksiという新語が生まれるに及んでは。どうしてそうなるのか?


まず、ポルノグラフィに深いかかわりを持っているエロティシズムについて述べよう。エ
ロティシズムは古代ギリシャ語のエロスに由来する。アフロディーテの息子、愛の神だ。

英語のeroticismは性的興奮という語義になっている。フランス語でエロティズムの定義
はリビドーをベースにするものだ。リビドーという語は欲望を意味している。KBBIで
はリビドーを、本能的色欲としている。

その発展形態としてのエロティシズムはリビドー相における愛に関わるものである。男と
女の愛がスピリチャルとリビドーのふたつの相を持っているのは否定しようがない。エロ
チックな相を含んでいる文学や絵画彫刻は反論不可能な人間の実体を描写している。

ポルノグラフィの語義は異なっている。この語の語源は古代ギリシャ語のポルネで娼婦を
指し、グラフェインで書くことあるいは書かれたものを示す。フランス語でその言葉は文
章・絵画・音声などによるわいせつなことがらの提示を意味している。ポルノグラフィは
わいせつ、見た目に不愉快、下品などの基本語義を持っている。エロチックな文学や絵画
彫刻を即ポルノグラフィと決めつけることはできない。民話の中にエロティシズムはしば
しば登場するし、レノンやトペンブタウィにもエロチックなギャグは少なくない。

伝統的バリ絵画にエロチックな絵は多い。わいせつさを前面に押し出したとき、エロチシ
ズムは搾取されうるポルノ作品になる。色欲を煽ろうと意図して作られるブルーフィルム
やポルノ小説の中でわれわれが問題にするのはそれだ。

故意にそれをしないのであれば、エロチックな作品を何がわいせつにするのだろうか?記
号論の中に記号現象というものがある。ある物や行為に対して個人の文化的体験から意味
付けや解釈を行うプロセスのことだ。

あるとき米国人観光客をモナスに連れて来たガイドが、客から質問を受けた。「塔の上に
のっているのは何か?」
ガイドは切り返した。「あなたは何だと思う?」
客の答えは「アイスクリーム。」
[ 続く ]