「電子KTP異変〜国は美田なり(2)」(2018年12月14日)

電子KTPの発行が遅れているから、その事実を証明するための書状を町役場が6カ月期
限で発行した。オリジナルがなくとも、この証明書で何とかできるところはクリヤーして
くれという親心なのだろうが、それがテテンさんの奥さんにはあだになった。奥さんの勤
め先は、理由が何であれ、仕事に来なければ一日30万ルピアがカットされる。6カ月に
一度、奥さんは期限延長のために仕事を休まなければならない。月給260万ルピアが2
30万ルピアになってしまうのである。町役場への交通費は自腹で、おまけに収入が減ら
されてはたまったものでない、という心境だ。

期限延長に行くたびに、町役場職員に「オリジナルはいつになったらもらえるの?」と尋
ねているが、返事は決まって「待っていれば、そのうちやってくるよ。」というものだ。
テテンさん自身、友人から依頼されてある村の住民に電子KTPの発行の口利きをしたこ
とがある。50万ルピアを持ってくるように言われ、友人がその金を支払ったら、その翌
日電子KTPのオリジナルが届いた。
「いやあ、うちは150万ルピアも用意できねえよ。」テテンさんはひたすら待ちの姿勢
に入っている。


その一方で、また別の奇妙なことも起こっている。国の中枢で管理されている背番号の付
けられた国民データから、ひとり一枚しか発行されない原則になっているはずの電子KT
Pを、二枚もらったひともいる。

西バンドン県レンバン郡に住むアドフェンさん18歳は、2017年12月に電子KTP
発行手続きを済ませてから二か月後にオリジナル電子KTPを入手した。ところが西バン
ドン県の県令選挙投票日からしばらく前のある日、会ったこともない一群のひとびとがか
れを訪れ、かれ名義の電子KTPをかれに手渡したのである。そして県令選挙立候補者の
ひとりに投票するようにと言い残して、ひとびとは立ち去った。

西バンドン県パロンポン郡に住むリヤニさん17歳も、まったく同じことを体験した。か
の女もだれそれに投票するように言われて、二枚目の電子KTPを渡されたのだ。[ 続く ]