「ロンタルは生命の木(1)」(2018年12月17日) 南アジアから東南アジア一帯を原生地とするロンタルヤシは、パームヤシの一種だ。幹は 直径60センチ、高さは15〜30メートルに達する。この木の葉で原住民はゴザや帽子 その他の手工品、あるいは布を作り、ティモール島では楽器のササンドに使われ、更にそ こに文字を書いて書物にすることも行われた。古代バリ島文化の記録はロンタルの葉に記 されたものであり、バリ島では書物を読み、書かれた文句を唄うとき、ロンタルを読むと いう表現が使われる。 ロンタルの木は堅くて質が良く、建築資材や家具調度品の製作にもってこいだ。花からは 花液が獲れ、ニラロンタルと呼ばれるその液体を煮詰めれば砂糖になり、あるいは発行さ せてヤシ酒にする。若い実もそのまま食べられる。成熟した実も煮ておやつにされるし、 その汁をケーキやジャムに使う。 東ヌサトゥンガラ州ロテンダオ県北西ロテ郡ダウドル村住民のひとりはロンタルヤシの木 を生命の木だと表した。母乳が赤児を育てるように、その木は人間に限りない恵みをもた らしているのだ。 その朝、マルガレータさんの家の裏庭は賑やかだった。普段みんなからママ・イタと呼ば れているマルガレータさん53歳と妹たちが集まって、グラレンペンを作っているところ だ。 ロンタルの花液ニラが入った大きな鍋が三つ、火の上に載せられている。一番右の鍋はも う長い間煮られているから、一番最初に煮詰まってくる。とろみの付いた白色のニラはヤ シの殻に入れて、バナナの木で細かくつぶす。すると薄茶色のカラメルになる。 平らな板の上にロンタルの葉で丸く作った直径2.5cmほどの輪を並べ、そこにカラメ ルを流し込む。三十分もしないうちに、カラメルは固まる。グラレンペンのできあがりだ。 ママ・イタは語る。「わたしらの暮らしは親から受け継いだもの。親たちもこれだけをし てきたんですよ。グラレンペンを作るだけ。」 夫が採取してきたニラロンタルから、みんなしてグラレンペンを作る。材料があるかぎり、 一日に4百個は作れる。それをブサランガ市場に持って行って売る。15個で1万ルピア だ。市日は週二回。売上は50〜60万ルピアになる。週で百万、月で4百万を超える。 売上で日々の生活費と子供の教育費を満たす。[ 続く ]