「電子KTP異変〜国は美田なり(3)」(2018年12月17日)

住民管理行政に関する2013年法律第24号の第96条には、住民管理公文書のブラン
クフォームと作成された公文書そのものを、その権利を得ないで作成・発行・配布した個
人/団体は10年以下の禁固刑および10億ルピア以下の罰金刑に処す、と記されている。
ところが、政府が3社に製造をオーダーし、オーダー分を超える生産を禁止し、全数を規
定納入先に納めさせ、それを全国に配布して、厳密な枚数管理を行っている電子KTPブ
ランク品が市中で売買されているという情報は、昔から存在した。


それがここに来て、その情報はますますマッシブになった。東ジャカルタ市プラムカポジ
ョッ市場が巣窟だと言う。コンパス紙記者は二人連れで市場内に潜入した。駐車場に入る
と、すかさずチャロが寄ってきて尋ねた。「何を探してるの?」

電子KTPを作りたいと言うと、チャロは市場の中に先に立って入って行った。中の一角
に、机の上にコンピュータとプリンターが置いてある売場が十数カ所ある。結婚招待状な
どのプライベート印刷物を作るサービスをしている業者の一つだ。売場には、カラープリ
ント・書籍複写・招待状・翻訳・垂れ幕印刷・名刺・レターヘッド・ステッカーなどの商
品メニューが掲げられているが、さすがに電子KTPという文字は見当たらない。その闇
商売はチャロが客を連れて来ることになっているのだ。そんな売場のひとつにチャロは記
者を案内した。店主はDと名乗った。

「何に使うの?」とDが尋ねる。記者は「就職だ。」と告げた。一枚65万ルピアだ、ブ
ランクのものだったら一枚15万ルピアだ、とDが言う。タワルムナワルが始まり、最終
的に50万ルピアで合意した。

Dは仕事を始めた。まず顔写真の処理だ。写真をスキャンしてから、顔写真の背景色を赤
色にした。誕生年が奇数の者は背景が赤、偶数年は濃青色。

住民基本番号(NIK)もロジックを合わせなければならない。Dはコンピュータ内のフ
ァイルを開き、州県郡のコード番号を探して組み合わせ、NIKを作り出した。

記者が世間話に似せていろいろDから聞き出そうとしたが、Dはあまりしゃべらない。ニ
セモノ電子KTPを作りに来る者は普通、ローンや就職に使うのを目的にしているといっ
た程度のことしか話さず、いそがしそうなふりをして、質問の多くを黙殺する。

記者がまた質問を始めた時、Dの顔に疑惑の色が浮かんだ。「あんたら、あれこれ尋ねる
なあ。何者?急襲追跡班(警察)かね?」
[ 続く ]