「ロンタルは生命の木(2)」(2018年12月18日)

子供のひとりは学校を終えてから、クパンの宗教役場に臨時雇いとして勤めている。もう
ひとりの子は聖書学校を出て、クパンで所帯を持った。末っ子は高校を終えた後、ジャカ
ルタに出ている。みんなロンタルでそこまで来た。親だけじゃなくて、先祖代々みんなこ
のようにしてやってきた。「ロンタル一本やりでねえ。」とママ・イタは語る。

もちろんグラスムッと呼ばれる粉砂糖も作るが、これは注文があるときだけだ。グラスム
ッは作るのに手がかかって、しかも売上高が低い。マグカップ5杯分で2万ルピアにしか
ならない。グラレンペンだと30個で2万になる。

ニラロンタルは商品を作るためだけでなく、水田の農作業を行う際の食料として水あめ状
にして持って行く。空腹はそれで癒すそうだ。


ロテではどの家も、ロンタルの木に暮らしの基盤の一部が支えられている。幹は家屋を支
える大黒柱になり、葉は屋根を覆い、葉脈は垣となって畑の周囲にめぐらされる。
「わたしにとって、ロンタルは本当に生命の木なの。あれは母乳と同じ。わたしの人生は
全部あの木のおかげなんだから。」ママ・イタはそう語った。かの女にとって、先祖代々
続けられてきたその生活様式が自分の代で終わってしまうかもしれないことがとても残念
に思われる。かの女は子供たちが、そして村の若者たちがロンタルの木から離れたライフ
スタイルに変わって行きつつあることにいら立ちを覚えている。

ロテのひとびとはロンタルの木を植えない。ひとりでに生えてきて、大きく成長する。ロ
テンダオ県ロバイアン郡トゥアナトゥ村に住むアメリア・オットさん58歳は十年前から
ロンタルの葉を編んで手工品を作る活動を始めた。ロテの民族帽ティイランガ、シリピナ
ンの入れ物トンダス、篩、ゴザ、楽器ササンドのミニチュア・・・。

元々ティイランガ職人だった父親から習い覚えたその技術を、アメリアさんは夫のラザル
ス・キアッさん71歳に教えた。夫はティイランガだけを作るようになった。更にその技
術を娘のママ・エルシさん40歳に教え、孫たちにまで伝えさせようとしている。ロンタ
ルからあらゆるものが作り出せるのだ、とアメリアさんは語る。[ 続く ]