「電子KTP異変〜国は美田なり(4)」(2018年12月18日)

プラムカポジョッ市場の別の売場の店主Nはブランクカードを二種類用意している。ひと
つは新品で一枚20万ルピア、もうひとつは中古で、表面が削り落としてある。中古は一
枚15万ルピア。

タワルムナワルには乗って来なかった。新品を10枚以上買えば一枚15万ルピアにして
もいい。50枚以上だったらもっと割り引いてやろう。
「そんなにたくさんすぐ用意できるのかね?入手ルートは確かかい?」
「ああ、印刷会社から手に入る。」
「どこの印刷会社?」
「そりゃ言えん。何しろ公文書だからな。そんな詮索しないで俺から買え。」

電子KTPカードの中古品というのは、期限が切れたため持ち主から回収されたものだ。
折しも18年12月8日、東ジャカルタ市ポンドッコピの水田で打ち捨てられていた期限
切れ電子KTPの詰まった袋が発見されている。袋の中には、2,005枚の中古品電子
KTPが乱雑に詰め込まれており、地元の子供たちがそれをおもちゃにして遊んでいたの
を見たおとなたちが警察に届け出た。最初、その袋に何枚入っていたのかは、だれにも分
からない。


プラムカポジョック市場にほど近い東ジャカルタ市プラムカ市場もニセモノKTPのマー
ケットだ。プラムカ市場は医薬品や医療器具をメインにする市場で、また鳥市場としても
有名なところだ。

この市場の片隅にもプライベート印刷物作成業者がいて、同時に同じような闇商売もして
いる。記者は調査目的に新品ブランクカードを買って帰ることにしていたから、プラムカ
市場をも訪れた。駐車場に入ると、チャロがふたりアプローチしてきた。ここではブラン
クカードをチャロが売っている。チャロは一枚10万ルピアの値付けをした。

記者がニセモノは作れるのかと質問すると、もうひとりのチャロは声を落として「もちろ
んだ。」と返事した。
「用心しなきゃなあ。2019年総選挙を控えて、最近は官憲の目がことさら強く光って
るから。」

この電子KTPという公文書偽造にも、贋札犯罪と同じように、政治が影を落としている
のは明白な事実だ。[ 続く ]