「電子KTP異変〜国は美田なり(6)」(2018年12月20日)

これまでも市中では、消費者が提示する電子KTPをカードリーダーにかけてまでチェッ
クすることがほとんどなされていなかった。昔の紙製KTPならいざしらず、政府がニセ
モノはありえないと保証している電子KTPを疑ってそこまでする人間はまずいない。そ
れが今や、一片の神話と化してしまったのである。

こうなれば、電子KTP内に収納されているバイオメトリクスデータで真贋判定する以外
に方法がない。逆に言えば、それが真贋判定の決め手に使えるということでもあり、あと
は国民がそのようなプロセスを習慣化して受け入れるかどうかという、ソーシャルビヘイ
ビアの問題に向かう。インドネシア社会でそれはちょっと考えににくい話であるように思
えてしかたない。


記録によれば、電子KTPニセモノ事件は2016年5月に既に東ジャカルタ市プラムカ
通りで発生している。そのころ、一枚70万ルピアで売買されていた。

16年8月には電子KTP偽造事件を国家警察が摘発し、犯人は159枚の電子KTPを
持っていたことが公表された。

17年1月にはヨグヤカルタでレンタカー盗難の犯人グループ4人が逮捕され、かれらが
犯罪に使っていた電子KTPがニセモノであることが判明した。

17年2月には、カンボジャから郵送されてきたデータ入り電子KTP36枚を税関が押
収し、受取人を逮捕した。犯人の自供によれば、使用済み電子KTPを拾い集めてその内
容を入れ替えたものだったそうだ。作業が国外で行われたように見せかけるつもりだった
らしい。

17年3月にはブンクル州で、自動車購入ローンを詐取するためにニセモノ電子KTPを
使った二人組が逮捕された。

17年12月には、スカブミ市アルムルク病院に持ち込まれた電子KTPのチップが読み
取れないため市庁住民管理市民登録局に回されてきたものを、局職員がそれをニセモノと
見破って届け出た事件があった。

それどころか、汚職犯罪者たちもプラムカポジョッ市場製のニセモノ電子KTPを重宝し
ていたことが裁判の中で明らかになっている。ある企業が運輸省海運総局に贈賄するため
にニセモノ電子KTPを使ってマンディリ銀行に口座を開いた事実が法廷の中で証言され
ている。

18年4月には、夫婦の詐欺師が物品購入ローンを詐取するためにニセモノ電子KTPを
何種類も作ってあちこちの金融機関から金をせしめていた事件がタングラン市警によって
摘発されている。かれらは犯行のたびに知人から一枚50万ルピアでニセモノを手に入れ
ていた。[ 続く ]