「アナクラカタウ津波と自己責任(前)」(2019年01月08日)

アナクラカタウ山が丘陵状態になったとはいえ、火山活動がやんだわけではない。18年
12月27日に火山警戒ステータスがレベル3に引き上げられた後も、山はきわめて活発
な噴火を続けている。

低くなった山体におよそ1キロにわたってひび割れが見つかっており、振動によって再度
崩壊が起こる可能性は否定できない。その総量は6千7百万立米とのことであり、海中に
どのように崩れ落ちるのか次第で、津波の規模が決まって来るにちがいない。


12月22日に起こった津波での死者は最新版で437人、いまだに発見されていない行
方不明者は16人と報告されている。ジャワ島とスマトラ島にはさまれたスンダ海峡沿岸
部は観光行楽地区だ。そしてスンダ海峡の中央部にあるアナクラカタウの島々は、地の利
を得た海洋観光に付加価値を添えるアトラクションになっている。津波犠牲者の中に、た
またま海遊びに来ただけの観光行楽客も少なくなかったにちがいない。

観光行楽地はどこでも大差ないわけだが、地元観光業界にとっては自然災害のリスクがあ
ることを喧伝されて客足が落ちたり途絶えたりしては、死活問題になりかねない。それど
ころかむしろ、リスクはなくて安全だから、その観光地へ行っても大丈夫だ、と言っても
らいたいのが本音にちがいない。そこに行政にとってのジレンマが生じる。


十数年前にアナクラカタウの火山活動が活発化したとき、観光客が大勢やってきて漁船を
チャーターし、危険度が上昇している火山島に上陸して火山観光を行い、中にはテントを
張って野営した観光客もいた。

火山警戒ステータスに従えば、火山島への接近すら危険であり、上陸はもっての他で、上
陸禁止が世の中にはっきりと打ち出されているというのにそのありさまだったのである。
行政が実力でそれを禁止しないというところが上述のジレンマを絵に描いたような部分で
あり、ましてや上陸する観光客の大半が外国人とあっては、あたかも観光振興の方が人命
尊重より上位に置かれた印象を感じるのはわたしだけではあるまい。

今回のクライマックスの序奏段階だった18年8月ごろの状況は、次の記事でご覧いただ
けます。「アナクラカタウが観光ブーム」(2018年08月27日)
http://indojoho.ciao.jp/2018/0827_3.htm
[ 続く ]