「無許可就労外国人20人を一網打尽」(2019年01月14日)

南スマトラ州パレンバン第一級イミグレーション事務所に勤務するかれは、買物に入った
パレンバントレードセンターモールの一階催し物会場が大勢の人間でごった返しているの
に注意を引かれた。そこでは一群のひとびとがマッサージセラピーのデモンストレーショ
ンをしていたのだが、解説者のアナウンスがすべて英語でなされているのにかれは違和感
を覚えた。

一群のひとびとはすべて華人風の容姿容貌であり、もしもインドネシア人であるのなら一
般大衆向けにわざわざ英語で売込みをかけるなど非効率もいいところだ。マッサージのデ
モを行っているひとびとも、みんな英語を話している。かれの心中に疑念が湧いた。

セラピーは市内ノヴォテルで行われるので、希望者はアポを取り、その時間にホテルに来
るように、という説明だった。来店客の反応を見ると大勢がアポを取っている。百人は超
えているように見えた。かれは取り調べる必要性を感じ、自分もその場でアポを取った。
2019年1月8日20時ごろのことだ。


かれは帰宅すると、すぐに法務人権省パレンバン地方事務所の要職者に電話して、取調べ
を行うよう促した。翌朝、地方事務所から第一級イミグレーション事務所に調査の指示が
下った。イミグレ捜査員がノヴォテルに向かう。

ノヴォテルでは、ロビーで何人ものセラピストがマッサージを行っている。捜査員はホテ
ルマネージャーに面会を申し入れた。ホテル側の話では、かれらは全員がホテルに宿泊し
ている外国人であり、ホテルからロビーの一部を借りて活動を行っているということだっ
た。そのグループは男女を交えた20人から成っていた。

インドネシア国内で医療行為を行う場合、種々の許認可と資格の問題が生じる。かれらが
行っているのは医療行為に該当し、おまけに商業活動にも該当しているということをホテ
ル側がかれらに説明し、それらの許認可を得て合法的に行っているのかどうかを確認する
よう、捜査員はホテル側に依頼した。結果はクロと出た。捜査員は即座に応援の出動を事
務所に求めた。20人を網にかけるには手が足りない。逃亡されてはあとが面倒だ。


一網打尽にされた20人は、マレーシア国籍16人、中国籍2人、香港籍1人、ベルギー
国籍1人で、全員が観光入国しており、だれひとりとして労働許可を得ていなかった。お
まけにインドネシア国内で医療行為を行う資格認定も、また医療活動を行う許認可も、完
全にゼロの状態だったのである。

捜査員はかれらひとりひとりの携帯電話器を合計20個、そしてかれらが違法活動のため
に使っていたマットレスや枕およびその他の関連性のある物品、ノートパソコンなどを押
収した。

20人の取調べで明らかになったのは、まずパレンバンでかれらは逮捕されるまで三日間
活動を行っていたことで、その前はバリとメダンで同じことを繰り返していたそうだ。か
れらは一カ所での活動を、三日を限度としていたらしい。長居をすると官憲の目に留まる
可能性が強まるため、その対応として自主規制をかけていたにちがいない。

この商売でかれらは、セラピーを受ける客から一人当たり450万ルピアを徴収していた。
毎日の稼ぎは10億ルピアに上っていたそうだ。

法務人権省はこの事件に関して、イミグレ法規違反とその処罰としての国外追放という流
れとは別に、無許可労働ならびに無許可医療行為に関して刑法犯罪としての措置を執るこ
とを表明している。とりあえずはまず刑務所に入れる、というのが法務人権省筋の意向だ。
そのためにも、かれらの医療行為を受けたひとびとの中で、不満を感じたひとや苦情を言
いたいひとはどしどし届け出てほしい、と法務人権省は広報告知し、期待をかけている。