「ジャワ島を狙うインド洋津波(後)」(2019年01月15日) パガンダランでは2006年にM7.9の地震と津波が起こって大きい被害を出しており、 パチタン〜バニュワギは1994年にM7.8の地震に襲われている。その二つの震源地 の間では、長期に渡って地震が記録されていない。 同じように、パガンダランから西方スンダ海峡までと、バニュワギとバリ海峡の間でも、 地震の記録がないのである。 津波のリスクに注目するなら、巨大津波が常に巨大地震によって引き起こされるという理 屈にはなっていない。1972年に地震学者の金森博雄氏が定義した津波地震理論によれ ば、地震動と津波の大きさがリンクせず、体感あるいは計器による測定値は小さいのに大 型の津波が発生することさえありうるのだ。つまり地震の強さが発生させる津波高の想定 値よりも、津波地震は数倍大きな津波をもたらすということなのである。 技術研究応用庁地震専門家は2006年のパガンダラン津波分析研究で、モデル計算によ る津波の高さは2〜4メートルにもかかわらず、実際に発生したのは高さ8メートルのも のだったことが明らかにされている。 一方、インドネシア科学院地質工学センター研究員はジャワ島南部海岸の地質調査を行っ て、過去に起こった津波襲来に関する発見を報告している。それによれば、バンテン州ル バッから東ジャワ州パチタンまでの海岸で4百年ほど前と見られる津波堆積層が発見され、 更にはスカブミ県ウジュングンテンの湿地帯で津波堆積層が7つあるのを発見している。 パガンダラン西方のメガスラストが数世紀にわたって膨大なエネルギーを貯えつつあるこ とは間違いあるまい。そしてウジュンクロンの西方を通るメガスラストにも同じことが当 てはまるにちがいない。[ 完 ]