「ロテンダオの旅」(2019年01月18日)

乾燥した不毛の大地、緑少なく荒れ果てた地相、容赦なく照り付ける太陽に、ともかくも
暑いとひとは言う。それが東ヌサトゥンガラ州ロテンダオ(Rote Ndao)だ。降雨量はきわ
めて少なく、雨雲さえここを避けているようだ。

そんなロテンダオに神が与えた恵みのひとつ、美しい海岸をその目で見たさに、コンパス
紙記者は暑さをものともせずにやってきた。案の定、日中の気温は30℃を下らない。

純粋で天然のままの、人間による汚染から免れている美しい海岸のひとつは、西ロテのボ
ア(Boa)村にあるバトゥピントゥ(Batu Pintu)ビーチ。クパンからロテンダオの首府バア
(Baa)へは、いくつかの方法がある。小型機、フェリー、あるいは高速ボート。バアから
ボアへは四輪車で二時間弱くらいの行程だった。

その途中で目にした丘陵の連なりは絶景だった。もちろん、緑滴る光景などない。葉や枝
の一部を枯らしながらも生命力を残った濃い緑に蓄えている木々が露出した乾燥地を踏み
しめている姿は、よそで体験できない美のひとつだろう。そこにあるのは強いコントラス
トに支えられた美なのだ。そこに透き通るような空の青さと散らばる綿雲の白さが加わっ
て、ひとつの描画が完成する。

忘れてならないのはロテの生命の木、ロンタルだ。ロンタルこそが住民に、厳しく過酷な
大自然から保護を与え、ひとびとの生活を下支えしてくれるのである。


バトゥピントゥはゲートロックを意味する。露出した巨大な岩礁の集まりの下部が空洞に
なっていて、まるでアーチ状のゲートをくぐっている印象を受けることから名付けられた
そうだ。そこに地元政府は観光客のために最低限の化粧をほどこした。安全確保のための
通路と手すりだけ。あとは大自然が作ったままにしてある。

そしてこれも大自然が作ったままの白砂の浜と海。海に身を沈めて遊びたい誘惑を振り切
って、記者はそのパノラマに別れを告げた。次はバトゥピントゥビーチと同じ海岸線とし
て続いているが、ちょっと離れた距離にあるオエンガウッ(Oenggaut)村のリフラダ(Lifu 
Lada)ビーチを訪れる。

リフラダビーチも巨大な岩礁に彩られた場所だった。ここも、風と波、砂浜と海、そして
ただひとり大自然と向かい合って過ごせる時間を持てる場所。リフラダビーチはきっとそ
んな愉しみ方に適した場所であるにちがいない。

すでに陽は傾いた。日没を待つために記者はそこから遠くないネンブララ(Nembrala)ビ
ーチに向かう。サーファーのパラダイスと呼ばれているネンブララビーチにはたくさんの
外国人サーファーがやってくるのだが、地元行政がビーチの改装を行っているため、しば
らく前から閉鎖されていてサーファーの姿はない。

だがサンセットはまた別だ。日の入りを愉しもうと地元民が集まって来る。その日集まっ
て来たひとびとの中に、やはり外国人観光客の姿は見られなかった。

この地区に住んでいる地元民の中には、犬を連れて踏み分け道を徒歩でやってくるひとび
ともいる。ひとびとはしばし浜で遊び、毎日決まって繰り返される日没の夕焼け色の中で、
その一日の生を祝うのである。

そこのワルンでシーフードを。ところが残念なことに、その日イカンバカル(ikan bakar)
はもうなかった。だがナシトゥンプンミニ(nasi tumpeng mini)とサテチュミ(sate cumi)
で味覚の欲求を、記者はかろうじて満たすことができた。