「唐人街の老舗床屋」(2019年02月06日)

バタヴィア始まって以来のチャイナタウン中心街はグロドッ(Glodok)。 バタヴィア城南
城壁のすぐ南側からピントゥブサールとピントゥクチールの両通りを数百メートル下れば
グロドッ地区だ。

グロドッ商業センターの中心をなすパンチョラン通りの北側ブロック内に1936年以来
の由緒を誇るバーバーショップ「コータン(Ko Tang)」がある。

グロドッの北部をなすペタッスンビラン地区の南ピントゥブサール3通りガングロリア
(Gang Gloria)にあるこの店は間口6メートルほどで、周りは飲食店に囲まれており、見
つけにくいかもしれない。入り口扉は濃い茶色の木製で、左右の窓には「Pemangkas 
Rambut Ko Tang」と記されている。初代店主はポー・キムティアン氏であり、コータンと
いうのは人名でなく高級を意味する言葉だそうだ。その創業期にバーバーショップを利用
するひとびとはハイクラスだったに決まっている。プリブミ一般庶民がやってくるような
場所でなかったのは周知のことだ。

一般庶民の散髪は木の下床屋あるいは緑蔭床屋と呼ばれる店舗を持たない職人たちが行っ
ていた。職人たちはたいてい毎朝、決まった場所にやってきて木の下に椅子を置き、客が
来るのをそこで待った。夕方には店じまいをするのが普通だったようだ。

しかし今は独立インドネシア共和国の時代。一般庶民の誰でもが利用できる時代だ。サー
ビスメニューは昔から変化していない。散髪・洗髪・ひげそり・髪染め・耳掃除。洗髪は
まずマッサージをし、特殊ブラシを当ててから洗面台で洗う。

料金は散髪5万ルピア、洗髪3万ルピア、耳掃除3万5千ルピア。それをまとめてパッケ
ージにすると、9万ルピアで済む。

ジャカルタの著名人たちは、一度はここを訪れているらしい。店に飾られているジョコ・
ウィドド元都知事、サンディアガ・ウノ前副都知事、ジャロッ・サイフル・ヒダヤッ前都
知事代理などの散髪中の写真を見れば、それがよく分かる。