「老舗床屋いろいろ」(2019年02月07日)

ジャカルタの老舗床屋は他にもある。西ジャカルタ市マンガブサールラヤ通り26番地に
あるのがキングズバーバーショップ。1980年代初めごろオープンしたこの店は198
3年に最盛期を迎えたそうだ。当時はパサルバルのクレコッ、トマン、オリモ、パサルパ
ギのアセムカ、プジャガランの5カ所に支店を開き、大いに繁盛した。

当時の散髪料金はひとり1千5百ルピア。ナシラムスが一皿100ルピアで食べられた時
代の1千5百ルピアだから、廉くはない。それでも一日に百人くらいの客が入ったそうだ。

ビジネス競争相手が激増し、おまけに男性が女性向けサロンに入るような時代の昨今、一
日の来店客は25人程度らしい。コンパス紙記者が取材に訪れたその日、鏡の前に大型の
椅子が5脚並んでいる店内に客はまだいなかった。座った客の頭の高さを散髪職人が上下
させることのできる、その古くて頑丈な貫禄のある椅子にはベルモントというブランド名
が記されている。


ひとりの客が入ってきて、散髪職人マルダンさん74歳がタオルを手に立ちあがった。客
はずかずかと入ってきて椅子のひとつに座る。すると、待ってましたとばかりマルダンさ
んもはさみを振るい始める。ふたりの間に会話はほとんどなされない。

記者が不思議な表情でそれを眺めていると、キャッシャーのユリアナさん40歳が言った。
「あのお客は昔からのおなじみさんなんで、お好みのヘアスタイルは知り尽くしているん
ですよ。」道理で機械的な作業がなされているわけだ。マッサージが終わると客はマルダ
ンさんにチップを渡し、レジで支払いをして立ち去った。


メンテン地区にも老舗床屋がある。1969年にタマンメンテン地区にオープンしたシン
タズバーバーショップ。2006年にチキニ地区のモールメンテンハイスに移転した。モ
ール一階の小さい店で今も営業を続けている。

店内に散髪用椅子は3脚、一日の客数は平均して30人くらいだそうだ。散髪料金はひと
り7万5千ルピア。古くからメンテン地区で営業していただけに、上流層の常連客がつい
ている。大臣経験者のフアッ・バワジル氏やアルウィ・シハブ氏もこの店にやってくる。
「二カ月前にそのおふたりも、ここへお見えになりましたよ。」店主はそう語った。