「クローブ原産地は北マルク(終)」(2019年02月18日)

チュンケアフォ第二世代の木の中で、アイルテゲテゲ(Air Tege-Tege)地区にあるものが
植物学者や観光客に有名なものになり、調査や諸情報の対象になっているものの、樹齢と
生命力から言えばこの木のほうが上だそうだ。

アイルテゲテゲの木は既に老衰状態になり、幹と枝の一部が残っているだけで、葉ももは
や繁茂していない。地元政府が周囲に壁を作ったため、根の成長が抑制されて、そんな状
況の一因を作ったのではないかと言われている。


アイルテゲテゲの木が悲惨な状況になっているのに対して、ハゲの木はいまだに豊かな生
命力を誇示し続けている。毎年6月〜10月の収穫期には、ユスマン〜ムッタル兄弟の木
々は一本で百キロを超えるクローブの実を提供してくれる。

その実はもちろん売りに出されるのだが、それとは別に苗を作る活動もかれらは行ってい
る。ハムダルさんの率いる農業グループの重要な活動のひとつがそれだ。

かれらは優良な苗に育つ実をつける親木を選抜し、その実を使ってチュンケアフォの苗を
作っている。農業省はガマラマ火山中腹の木々に対して、2010年にチュンケアフォ優
良種の認定を下し、そのうちの8本を優良親木に認定した。

ここで毎年2万本ほど作られる苗は、マルク州内は元より、南スラウェシ、北スラウェシ、
東ジャワなどのクローブ産地に送られて畑や農園を作り出すのに貢献している。

生産性の面でチュンケアフォと競うのはトゥニブルセル(Tuni Bursel)だ。しかし北マル
クのクローブ農民はチュンケアフォとザンジバル種、中でもザンジバルゴロンタロ(Zan-
zibar Gorontalo)種の方を愛用している。いずれも生産性は優れているが、病気や害虫
に弱い。

ザンジバル種というのはアフリカのタンザニアにあるザンジバルに由来しているのだが、
実はその先祖は北マルクのチュンケなのである。1818年にオランダ政庁に働くフラン
ス人ピエール・ポワーブル(Pierre Poivre)が苗を密かに持ち出して、当時フランスの植
民地だったザンジバルで栽培したものだ。

1932年にオランダ政庁はザンジバルのクローブ苗を買ってジャワ・スマトラ・マルク
に植えさせた。こうして里帰りしてきたザンジバル種のクローブは北マルクでどんどんそ
の場を広げているありさまだ。[ 完 ]