「冷凍サバヒー需要に異変」(2019年02月22日)

首都圏の華人社会に、陰暦正月のバンデン魚(ikan bandeng)は欠かせない。バンデン魚を
食べなければ年が明けないと言われるほど重要な風物詩だ。バンデン魚とは台湾でサバヒ
ーという名で有名で、英語ではミルクフィッシュと呼ばれる。

ところが中国大陸の陰暦正月では、魚は縁起物だからもちろん食べるが、サバヒーでなけ
ればならないということではないらしい。どうしてこんなことになっているのかと言うと、
バンデン魚はブタウィ人の慣習に由来しているのだそうだ。

ブタウィ人の間では、好きな娘を妻にもらいたい若者は舅にバンデン魚一尾をまるごとプ
レゼントしなければならなかった。どうやら舅にとって、婿を受け入れるか断るかの口実
にその魚のサイズが使われていたようだ。見栄を社会生活の大きな柱にしているブタウィ
人ならではのものだろう。

ところがそれにとどまらず、運よく舅の気に入られて婿になった男は、毎年バンデン魚を
舅に献上しなければならなかったらしい。ともあれ、バタヴィアの華人社会がその風習を
採り入れて、陰暦正月の縁起物をバンデン魚の一手独占にしてしまったことはあり得る話
のように思われる。なにしろ華人実業界が養殖産業の資本家になり、更に流通機構の大元
まで握っていたのだから。

西暦2019年の陰暦正月というバンデン魚の一年最大の需要期に、不景気な話が流れた。
2018年半ばごろから冷凍バンデン魚の需要に異変が起こっていて、冷凍バンデン魚の
販売が国内ばかりか輸出市場でも激減しているというトピックだ。但し国産冷凍バンデン
魚の需要は大半が国内向けで月5〜6千トンであり、輸出は月1千5百トン程度しかない。
国際市場でのバンデン魚需要はキロ7〜10尾サイズがもっとも多く、マグロ漁の餌に使
われる。料理用はキロ2〜3尾サイズだ。餌用の輸出先は台湾・中国・韓国・パラオ・ス
リナムで、料理用は韓国・中東・欧州。

インドネシアバンデン事業者協会会長は冷凍バンデン魚の販売がかつての一日30トンか
ら半減したまま今日に至っている、と語る。
「前は倉庫の平常在庫が3〜4百トンだったのに、今や7百トンにまで膨れ上がっている。
しかし価格は下がるどころか、上昇している。」

2017年はキロ当たり17〜23Kルピアだったが、18年は18〜24Kルピアに上
がった。価格に幅があるのはサイズで違いがあるためだ。

会長はその原因を、冷凍バンデン魚の需要減は今年の雨季が多雨だったせいではないかと
推測している。「豪雨が降ると養殖池があふれて魚が減る。だから養殖業者は早く収穫し
て小さめの鮮魚を廉く市場に放出したのではないだろうか。」

それは別にして、市場の要求が小さめの冷凍バンデン魚にシフトしているのも事実だと会
長は認めた。昔はキロ当たり3〜4尾が売れ筋だったのに、最近はキロ5〜8尾の注文が
増えている一方、キロ1〜3尾のサイズは在庫があまり動かなくなっている。その状況は
国内も輸出市場も似たようなものだ。市場の嗜好が変化した以上、生産供給面はそれに合
わせていくしかない。養殖業者がその変化に合わせて出荷してくるようになるまで、現状
の在庫過多は耐えるしかしようのないものになっている。

海洋漁業省養殖水産総局のデータによれば、バンデン魚の生産量は2017年が636,
825トン、18年は778,502トン、19年の生産目標は80万トンとのこと。