「エゴ社会の持つ公共性(後)」(2019年02月28日)

カキリマ商人らが世話人と呼んでいる者に、記者はインタビューした。世間一般からはプ
レマンと呼ばれている人間だ。かれの仕事は長さ30メートル幅5メートルのその歩道を
自分の縄張りとし、それをカキリマ商人に使わせて報酬を得ているのである。かれの仕事
を手伝って金をもらう「若え者」にも事欠かない。

この一帯のほとんどの歩道にそういう世話人がいて、公共スペースである歩道がショッピ
ングセンターに代えられており、官憲側がその粛清行動を行うに当たっては人数を集めて
法的作戦にしなければどうしようもない。官憲が数人で何かしようとしても手に負えるわ
けがないのだ。何しろ違反者は何百人ものマスなのだから。

その種の手入れが行われるとき、世話人はいち早くテナントの商人たちに情報を流し、か
れらの商品が没収されて被害が大きくならないように努める。不幸にして没収された場合
は、それを取り戻すべく役所側との交渉に努めてくれる。このようにして商人たちと世話
人との間に、合法性という枠の外側で信頼関係が築かれて行くのである。

クボンジャティ通りの歩道では、世話人は歩道の店舗側の地代を1.5メートル四方で年
間5百万ルピアとし、歩道側は60〜80万ルピアと値付けしている。

前都知事が遵法を主張して是々非々で鉄腕を振るったのに対し、現都知事は抱擁性を押し
出して、カキリマ商人を収容するための歩道橋を建設し、路上のカキリマ商人をそこへ移
したものの、年月が経つうちに歩道橋下の路上はまたかつての様相に舞い戻ってしまった。
タナアバン駅近辺の歩道は地代が150〜350万ルピアだそうだ。

都庁行政警察ユニットは、プレマンと官憲側の癒着など絶対にない、と強く否定する。
「路上にいたカキリマ商人を歩道橋に移して、路上を整理した。ところがプレマン組織が
空いた路上にまたカキリマ商人を誘って来て、そこで商売させている。プレマン組織の中
核が誰なのか、まだ詳しい情報が得られていない。少なくとも、個人レベルのプレマンを
官憲がバックアップするのはありえないことであり、もしそういう不良職員がいる証拠が
あがったなら、当方に連絡してほしい。」行政警察ユニット長はそう語っている。[ 完 ]