「ジャワの田舎にGlenmoreがある(1)」(2019年03月04日)

ジャカルタからバリへ向かうのに、車でチカンペッ(Cikampek)自動車道終点から国道一
号線を走ってスマラン(Semarang)手前まで行き、バイパス自動車道でソロ方面へ抜ける
のがわたしの当時の常道だった。チコポ(Cikopo)〜パリマナン(Palimanan)自動車道など
影も形もない時代だ。

ソロ市内を抜けたあと、スラゲン(Sragen)〜ガウィ(Ngawi)を経てモジョクルト(Mojo-
kerto)に向かい、グンポル(Gempol)を通過してパスルアン(Pasuruan)の街中を通り、ジ
ャワ島北岸を東行してバニュワギ(Banyuwangi)県の北からクタパン(Ketapang)港に達す
るルートを十回くらいは往復した。

スマランからスラバヤへ向かう北岸街道は路面状態がきわめて悪く、トラックなど大型車
両やセダン車も多くて混雑しており、最初に一度走っただけでこりごりしたから、二回目
からはインドネシア人が中央ルートと呼んでいる道を走ることにし、大いに満足した。混
雑状況も路面状況もはるかに良かったからだ。だからジャカルタからバリへ車で行くイン
ドネシア人には、いつもそのルートを奨めたものだ。

だが何度も走って慣れてくると、別ルートへの色気が湧いてくるもので、あるときソロを
越えたあと、南ルートを通って見ることにした。スラゲン〜ガウィ〜ガンジュッ(Ngan-
juk)を過ぎてから右折してクディリ(Kediri)の町に入り、そのまま南下してトゥルンガグ
ン(Tulungagung)からブリタル(Blitar)を抜け、クパンジェン(Kepanjen)〜ダンピッ
(Dampit)を通り過ぎてから山道に入り、スムル(Semeru)山の裏側から壮麗にそびえ立つス
ムル山を拝めたのは、今だに素晴らしい思い出になっている。

精神力と体力を消耗させる山道から降りて、そこからジュンブル(Jember)を目指すために
ルマジャン(Lumajang)経由の街道を避けて田舎道に入ったところ、大穴だらけの悪路の連
続で、ひどい目にあわされてしまった。


ジュンブルで一泊し、翌朝、爽やかな空気の中をバニュワギに向けて出発する。緑滴る中
に人家が点在する高原を国道3号線は一路わたしをバニュワギへと導いてくれる。かなり
走ってからバニュワギ県に入ったあと、グレンモア(Glenmore)という地名の書かれた看板
を目にして、わたしはわが目を疑った。最初は自分が見た綴りが信じられず、読み間違え
たものとばかり思った。しかし同じ綴りを二度目にして、その事実を受け入れざるを得な
くなってしまったのだ。

ジャワ島東端の田舎にしゃれた英語名の土地があることを、ジャカルタ住民の中で知って
いる者がいったいどれほどいることだろうか。[ 続く ]