「ヘイトイデオロギー(後)」(2019年03月22日)

ミャンマー、タイ、スリランカの仏教徒過激派集団も同じようなプロパガンダを流してい
る。「イスラム教徒がわれわれの祖国の上でイスラム化を推進し、はるかそれ以前から存
在していた仏教と仏教社会を滅ぼそうとしている。」

陰謀理論が飛び交って、それらの言説をサポートしている。イスラム勢は売られている布
や衣服類に避妊薬を混入しており、それを着用すると不妊症になって仏教徒の人口が減っ
ていく、とスリランカでは語られている。

ミャンマ―で仏教徒過激派はこう述べている。「かつてインドネシアは仏教徒で満ち溢れ
ていたにもかかわらず、今ではムスリムが支配的になっている。あんな風にならないため
に、祖国はわれわれの手で守らなければならない。」

ムスリムが売る商品を買わないようにという不買キャンペーンも行われている。かれらは
販売利益を使ってイスラム化の根拠地を建設し、最終的に仏教徒はマイノリティ集団にさ
れるのだから、というのがその理由だ。

インドネシアでも同じような感情がふたつのバージョンで流されている。西部インドネシ
ア地方では、「キリスト教徒の店を警戒しろ。そこで買い物はするな。店の利益がムスリ
ム社会のキリスト教化に使われるのだから」。東部インドネシアではキリスト教徒の間で、
自分たちの社会をイスラム化させようと画策しているムスリム勢の陰謀説がささやき交わ
されている。


先週の金曜日にニュージーランドではタラントが自作の宣言文「The Great Replacement」
を公表し、その中で大量移民は白人の皆殺しを意味すると述べた。わが人種の存続と白人
の子供たちの未来を守るために、イスラム教徒への対決行動を誓ったのである。

加害者と被害者の個々の集団はアイデンティティに違いがあるというだけであって、かれ
らさまざまな過激派の間に流れている恐怖と憎悪の感情は共通であることをわれわれはそ
こから看取することができる。

仏教徒、白人至上主義者、イスラム教徒、ヒンドゥ教徒、キリスト教徒のそれぞれは、加
害者にもなるし被害者にもなる。かれらのイデオロギーは憎悪イデオロギーなのである。
宗教や、その他のアイデンティティに関するものではない。

この憎悪プロパガンダによって、過激派集団たちが自己自身の内面に持っており、同時に
蛮行ターゲットにされる集団にも存在しているヒューマニズムに対する目隠しプロセスが
進行する。

外目にはどれほど純朴に見えていようとも、異なる集団に向けられる憎悪メッセージの危
険はそこにある。メッセージの出現が頻度を増すにつれて、それはひとびとの意識下には
びこり、その人間の行動に影響を及ぼすのである。

ヘイトスピーチは、それが人道犯罪のエネルギーになるがゆえに、言論の自由の一形態と
することができないのだ。ボワーズやディタやタラントたちのような人間が再生産されて
こないようにするために、憎悪発言や暴虐行為への扇動を拒否するべく、より力強いハー
ドワークに着手するべき時が今来ている。

ピッツバーグも、スラバヤも、クライストチャーチも、二度と起こってはならないものな
のだ。黙っていてはいけない。[ 完 ]