「男を釣る餌は女」(2019年03月26日)

男は女が好きで、女も男が好きだ。だから犯罪者が男を釣る時、若い女を餌にすることに
なる。逆の場合は不思議なことに、強盗団が男を餌にして女を釣るようなことが起こらな
い。起こっているのは、男が自分をダシにして金を持つ中年女性を色仕掛けで詐欺にかけ
る手口が一般的だ。この性差はインドネシアならではのものかもしれない。

今やプリペイド携帯電話番号は持ち主登録が国民アイデンティティ制度に連動させて行わ
れているから、適当な名前を登録して犯罪に使うことができなくなったが、ほんの数年前
までは詐欺SMSが毎日山を成して飛び交っていた。

犯罪グループは適当な電話番号にSMSを送り、誰かが針にかかるのを待つ。女性名であ
たかも身内の誰かに重要な内容の通信を送る風を装い、善意の被害者候補生が「間違い番
号に送っていますよ」と返信してくるのを待つわけだ。いざ候補者が針に掛かると丁寧に
礼を述べ、返信者が男だと互いに自己紹介して「お友達になりましょう」と発展させる。

その手にリスキ22歳が引っ掛かった。Mという女名で通信しているのは、実は男のD3
0歳だ。しばらく時間をかけて人間関係が構築された雰囲気が現れたなら、Dはリスキに
「一度お会いしませんか?」と誘いをかける。もちろん美人のMの顔写真は送付済みだ。

すぐに乗って来る男もいれば、リスキのように渋る男もいる。それはまあ、相手の情況次
第であり、パチャルがいて十分に満足していればその幸福を風雨にさらすまでもない、と
考える者もいて当然だ。だがそれとは別に、「据え膳食わねば・・・」という言葉がある
一方で「武士は食わねど・・・」というものもあり、男の値打ちを性行為に見出そうとす
るのか、それとも貪欲の裏にへばりついている卑しさの影を見続けるのか、そのあたりが
個性の差ということになるのかもしれない。

ともあれ、Dは女のふりをして実に巧みに被害者候補生を口説く。これも天賦の才能にち
がいない。相手はてっきりMだと思っているリスキは、ついに口説き落とされてデートの
約束をした。

当日の約束の時刻に、Dの仲間のR22歳が自分のパチャルのMを現場に連れて来た。D
とRは近くに隠れてMとリスキのデートを監視する。Dは他に4人の仲間を現場に呼んで、
リスキをカツアゲする準備を整えた。

準備が整うとRがふたりに近寄り、「てめえ、俺の女に手え出しゃがって、ただじゃ済ま
ねえ。詫びを入れるなら、出すものを出しゃがれ。」と威嚇する。Rの啖呵がクライマッ
クスに達したころ、4人とDがリスキを取り囲むように近寄る。その4人とは、24歳・
22歳・19歳そしてなんと14歳のプレマンたち。中のひとりはピストルを振り回す。

怖くなったリスキは自分のオートバイを置き去りにして、走って逃げようとしたが、すぐ
に捕まって乱暴狼藉シーンが始まる。そしてオートバイ・スマホ・現金などが奪われ、一
味は去った。全身ボロボロにされたリスキは警察に事件を訴え、Dと仲間4人はしばらく
してから逮捕された。MとRは逃走中。