「後退する西洋優位に怯える者(前)」(2019年03月27日)

ライター: バリ在住芸術研究家、文化人、ジャン・クトー
ソース: 2019年3月24日付けコンパス紙 "Jangan Biarkan Monster Bermunculan"

現代デモクラシーの土台をなしている諸価値システムは既に確立されたものであり、それ
は自ずと世界中に広まっていくようになるとヨーロッパ、そして西洋一般の知的エリート
層は考えがちだ。

フランス人インテリ層は1789年に基本的人権コンセプトを作り出したことを誇りにし
ている。英米の知識層も現代デモクラシーコンセプトを作り出したことを誇っている。ロ
ック・ルソー・カントの啓蒙思想の夢が永遠の優良思想であり、歴史の終わりには合理性
がすべての運営を勝ち取るだろうことをかれらは確信している。

外部世界からもたらされるデモクラシーをかれらはこれまで、脅威としてしか見なかった。
アラブイスラム世界からのものであれ、独特な資本主義を有する中国からのものであれ、
前進する経済発展に西欧型デモクラシーが不可欠と言えないことをそれは証明しているの
だが。

ところが西洋の知的エリートが持っているオプティミズムはその脅威に動揺しなかった。
歴史の進展の中で中国は最終的に西欧型への合理化がなされるだろうというかれらの確信
は揺るがない。アラブイスラム世界も同様に、世代交代と共に宗教解釈の変化の中でモダ
ンユニバーサリズムにますます染まっていくだろうとかれらは信じている。

行き着くところは、同時代の哲学者たちが抱いた政治オプティミズムを皮肉ってボルテー
ルがフランス革命の20年前にカンディ―ドの中で述べたように「あらゆる可能な世界に
おける最善のものは、すべてが最善のためにある」だ。そう、西洋知識層は相も変わらず
オプチミストであり、世界のデモクラシー進化の鍵を握っていると思って誇りを抱いてい
るのである。

突然、そのエリートの確信は揺れ動いた。50人のイスラム教徒がニュージーランドで、
白人ヘゲモニーを支持するひとりのオーストラリア人テロリストによって殺戮されたのだ。
ならば、デモクラシーへの脅威が外部世界からやってくるのでなく、西洋世界自身の中か
らとび出てきたこのあり様はいったいどういうことなのだ?歴史の暗黒面に刻まれている
奴隷制の伝統、クー・クラックス・クラン、そしてその論調がいたるところに広まってい
るナチズム理論。[ 続く ]