「インドネシア語を世界語に(3)」(2019年04月05日)

インドネシアで就労する外国人へのインドネシア語能力保有は昔から方針として定められ
てきたものの、具体的な義務付けに至ったことは一度もない。どうやら、外国人就労管理
行政はそれを望んでいるものの、実業界に賛否があって政府部内で声がまとまらないこと
がその原因であるように見える。

タテマエとしての外国人就労許可が技術移転とインドネシア国民に対する技術・技能の育
成であるという点を踏まえるなら、インドネシアに来てそれらを現地に根付かせるべき師
が現地語をろくに使えないのでは効果半減もいいところだという理屈は道理である。だが
現場を抱える実業界にはもっと複雑な諸フェーズがからみあっていて、そこまで単純化さ
れると将来の産業発展に悪影響が現れかねないという懸念があるのも事実なのだろう。

これまで何度も話題が出るたびに、最後の鶴の一声が「義務付けしない」で終わっている
実態は、この国がまだまだきれいごとだけで済ませることのできない、清濁併呑の不可欠
な状況にあることを如実に物語る証明であるにちがいない。そのように、一本の綱の上を
右に左に揺れながら進んで行かざるを得ないのが、この国の抱える宿命なのかもしれない。

その一方で、国外におけるインドネシア語学習熱は根強いものがある。外国語を学習して
上達してくれば、自分の能力を測定してみたいと思うようになる。インドネシア国内で実
施されたUKBIでは2016年から2018年までの間に外国人受検者が51カ国籍の
349人あった。最大は中国人100人、韓国人48人、シンガポール人29人、タイ人
22人などとなっている。

国語開発育成庁モジュール教材課長は外国人の受検評価について、概して成績はよいがイ
ンドネシアの複雑な社会構造と習慣が十分把握されていないことの結果、社会的立場が関
わって来るシチュエーションに応じた言葉の使い分けに弱点があると語っている。


実は昨今強まりを増している英語耽溺症候群への批判とインドネシア国民に対するUKB
I普及振興、そして外国人へのインドネシア語学習普及という一連の動きはひとつの大き
な戦略の上に載せられているものだ。更にそこには、外国から入って来る社会的・技術的
・思想的な新語に対応するインドネシア語作成を含めたインドネシア語ボキャブラリーの
増加、そしてボキャブラリーを増やすための原資となる地方語の整備と育成などといった
自国の国語政策も同時に載っている。

2018年10月に開催されたインドネシア語コングレスでその大作戦の見取り図が再確
認された。大作戦とはインドネシア語の世界言語化である。具体的には、インドネシア語
を国連の公用語のひとつにするという目標だ。現在、英語、フランス語、ロシア語、中国
語、スペイン語、アラビア語で占められている国連公用語にインドネシア語を加えるとい
うのである。目標時期はインドネシア共和国建国百周年に当たる2045年。[ 続く ]