「深夜の女性は犯罪ターゲット(後)」(2019年04月16日)

もちろんそれは「言うは易く」であり、乗車拒否が簡単に行えるわけがない。乗車拒否の
事実が明らかになれば、運転手は業務停止処分を管理者から受けることになる。ただ、女
性運転手は財貨を奪われるリスクだけでなく、レープというもうひとつのリスクも待ち受
けていることを忘れてはなるまい。レープに至れば、犯人が証拠隠滅をはかる可能性も小
さくないのだ。

警察はオンラインオジェッやオンラインタクシーが犯罪に利用されるのを極力防止するた
めに、事業運営者が乗客のアイデンティティを正確に把握して運転手が参照できるように
すること、乗客には運転手のアイデンティティと車両のデータを参照できるようにするこ
とを求めている。乗客が犯罪を行うだけでなく、運転手が乗客に対して犯罪を行うことも
頻繁に起こるのがインドネシアなのだから。


19年3月30日22時ごろ、タウヒッ氏は北ジャカルタ市アンチョルからカラワンへ行
くためにオンラインタクシーをオーダーした。やってきたタクシーの運転手は、STNK
(自動車番号証明書)を友人が持っているので、先にそれを受け取りに行きたい、と言う。
タウヒッ氏が了承すると、運転手はビナリアバス停に向かった。そこにいた男からSTN
Kを受け取った運転手は、その男も一緒にカラワンへ同行したいとタウヒッ氏に要請する。
三人の乗った車は一路、カラワンを目指した。

ところがしばらく経ってから、思いがけなく運転手の友人がタウヒッ氏の首を絞め、運転
手とふたりがかりでタウヒッ氏にナイフを突きつけて嚇し、金を出すよう迫った。タウヒ
ッ氏は仕方なく、携帯電話器ひとつと6百万ルピアの現金を強盗タクシーのふたりに渡す。
犯人ふたりはタウヒッ氏の服を脱がせてからブカシ県ムティアラバクティの道端にかれを
置き去りにして行方をくらました。

警察は一週間後にタクシーを運転していたA19歳と相乗りしたG24歳を逮捕した。A
はオンラインタクシーの運転手をしている友人のアカウントを使ってその犯行を計画的に
行ったそうだ。


オンラインオジェッ女性運転手が強盗客の魔手から辛うじて免れた事例もある。フェニさ
ん45歳は一年ほど前、22時ごろに女性客を乗せた。女性客は自分の携帯電話器をオン
ラインタクシーに置き忘れたので、それを取りに行くのだと言う。そしてそのオンライン
タクシーと落ち合う場所にフェニさんを向かわせた。

周囲に何もない、人通りの絶えた寂しい場所に着いて女性客が自動車の運転者と話してい
るとき、不審を感じたフェニさんは、女性客から料金を受け取っていないにもかかわらず、
そのままオートバイを発進させた。

それ以来、かの女は22時以降仕事をしない方針を貫いている。更に、人間でなく食べ物
や品物を届ける仕事の方を優先的に取るように変えた。人間ほど危険な存在はまたとない
ことを、かの女は心髄から理解したに違いない。[ 完 ]