「嘘書くヤツを信じる奴」(2019年04月22日)

南カリマンタン州ポンティアナッ市の女子中学生オードリー14歳がワッツアップに書き
込んだ内容に関連して、19年3月29日にふたりの女子高生が自宅へかの女を迎えに来
た。ひとりはオードリーの従姉妹だった。

ワッツアップの書き込みに女子高生が反論して、最後はなじりあいの結末になった。その
落とし前をつけようというのだ。オードリーは市内のスラウェシ通りまで連れて行かれた。
そこには10人ほどの女子高生が集まっており、オードリーはつるし上げられて暴行され
た。水を浴びせられ、蹴られ、髪を引っ張られ、殴られた。

従姉妹はオードリーを連れて逃げようとしたが捕まってしまい、オードリーはふたたび暴
行されて路上に倒れた。そのとき暴行者のひとりがオードリーの性器に故意に暴行を加え
た、とオードリーは訴えている。暴行の被害届が4月5日に被害者家族から警察に出され
た。


この事件が4月9日にメドソスの中で爆発すると、憶測をまじえたさまざまなナレーショ
ンが飛び交って、change.orgに4月10日時点で290万件のペティションが集まった。
「いじめをなくせ。」「暴行者を徹底糾弾せよ。」「法的裁きを行え。」とネットジャス
ティスは沸騰の様相を呈したのである。

年上の女子高生が女子中学生を集団暴行するだけでも判官びいきの心情を掻き立てられる
というのに、そこに性的暴行が加わったことで、女子高生暴行者に全国から憎しみが襲い
掛かって来た。

ところが法医学診察証明書には、オードリーの性器に暴行された形跡は皆無であり、何ら
損傷は見られないと記されていた。オードリーの家族は納得せず、再度診察を求めたが、
結果は同じだった。後になってオードリーは、「インターネットに書かれているような形
での性的暴行じゃありません」と語っている。

ポンティアナッ市警はこの暴行事件の首謀者として、それに関わった12人のうちの3人
を逮捕した。16歳ふたりと17歳ひとりのかの女たちは別々の高校に通っている仲間だ。
その供述によれば、それは集団暴行でなくて一対一の喧嘩だったという主張になっている。

3人のうちのひとりは親と一緒にオードリーの自宅を訪れて謝罪したが、被害者の親はそ
れをはねつけて、あくまでも法的措置を貫き裁判にかけると表明した。しかしネット上で
の大騒ぎとなったことから、教育行政から児童保護行政さらには大統領までが発言し、こ
の事件の処理は法的プロセスの外で行われることに方針が決まった。


とはいえ3人の女子高生に向けられたネティズンからの憎悪と断罪の嵐は凄まじいものが
あり、あたかも加害者に対する復讐の暴力がそこに渦巻いているように見える。

セレブリティからネット界インフルエンサーたちが入院中のオードリーを見舞いに訪れて、
その様子を映したビデオをネットに流す。売名行為どころか、真偽は別にして性的暴行事
件と騒がれているその被害者を、おまけに未成年である少女の素顔をそのままインターネ
ットに乗せて国中に触れまわっている。

ポンティアナッ市警が用意した記者会見の場で3人は謝罪の言葉を述べた後「わたしたち
はここで被害者になっているのです。大勢の人間からいじめられ、侮蔑され、罵られ、非
難され、威嚇され、テロの矢面に立たされているんです。事実はインターネットに書かれ
ているようなことじゃなかったというのに。どうしてわかってくれないのですか・・・」
と絶望を滲ませた口調で発言していた。