「アグン山の冒険者たち」(2019年05月06日)

バリ島アグン山は火山警戒ステータスが依然として第三級Siagaであり、火口から4キロ
以内は立入禁止区域になっているのだが、禁令を冒して登頂する観光客が後を絶たない。

地元民は登山口道路脇に駐車してある自動車を頻繁に目にするし、立入禁止区域内から下
山してくる観光客を見かけることも稀でない。そしてそんな観光客の中に外国人の姿が目
立っている。

アグン山はいつ噴火を起こすかわからない状況であり、現に19年4月21日には噴煙が
3千メートルの高さまで噴き上げられ、マグマが流出し、火山弾が火口から3.5キロの
範囲に撒き散らされた。火山灰はバリ島一円に広範囲に渡って降ったが、80キロ離れた
グラライ国際空港は閉鎖を免れている。


火口を取り巻く28カ村はフォーラムを設けて、情報交換や火山対策の共同作業などを行
っているのだが、この禁令違反登山者に対する対応に頭を痛めている。もちろん外来者の
違反行為の管理責任を地元民が問われることはありえないものの、遭難が起これば地元民
に支援要請が出るのは決まりきった話だ。

地元民は登山道入口に当たるプラパサルアグンの門を閉鎖した。しかし違反冒険者たちは
蛙のツラだ。4月21日の噴火の際にも、十人を超える外国人観光客が火口目指して押し
かけて来たそうだ。

村民ボランティアは違反観光客に警告を与えているものの、せいぜい住所氏名を書きとめ
る程度のことしかできない。かれらは行政当局に対して、禁令を出しっぱなしにするので
なく、相応の措置を取って違反者が出ないようにするべきだとクレームしている。


そもそも、立入禁止区域境界に看板を置いて禁令を告知することすら行われておらず、違
反行為を行おうとする観光客に対してそれを防止する体制も作られていない。地元民は外
来者が行う違反行為をただ見ているしかない。かれらがいくら警告を与えようが、違反者
に対して法的措置が執られないかぎり、冒険者は怖い物知らずになってしまう。

法治国家にあるまじき状況がアグン山で展開されているのを、地元民は嘆息しながら眺め
ている。