「ラマダン月の交通渋滞」(2019年05月13日)

イスラム教の断食は日の出から日没まで行われ、夜間はその代償行為の時間となる。日没
直後に行われるブカプアサbuka puasa、夕食、そして日の出前のサウルsahurと呼ばれる
深夜の食事。昼間働いている者はその間に睡眠を取らなければならない。寝過ごしてサウ
ルを取り損ねると、次の一日は厳しいことになる。

深夜2時から3時にかけて住宅地区では住民が集団で町内を練り歩き、「サウル!サウル
!」と叫んで、サウルの時間が来たから寝過ごさないで食事を摂るように注意する慣習が
作られ、その形は更に変化してモスクのスピーカーで「サウル!サウル!」の連呼を聞か
されるような町内のほうが多くなったように思われる。

ウンマーと呼ばれるムスリム社会の共同生活を顕著に示す行為だとわたしはそれを見てい
るのだが、但しサウジではそのようなことが行われず、反対にボランティアがさまざまな
食べ物を用意して街中に現れ、それをひとびとに分け与えているそうだ。また友人知人が
互いに相手の家を訪問し合い、一緒にサウルの食事をする習慣もあって、インドネシアの
スタイルはやはりインドネシアの文化、つまり人間観社会観に沿った形に営まれているこ
とを示していると言えるだろう。

そのサウルをみんな外出して、街中で一緒に摂ろうじゃないか、というアイデアが生まれ
てもう何年も経過した。そのsahur on the road行動は若者がメインをなし、道路脇のカキ
リマ屋台で食べ物を買い食いしてから、そのあと一斉に二輪車を連ねて大通りを示威行進
することが行われるようになった。

別のグループと遭遇すると「偉そうに肩そびやかしてるあいつらに我慢がならねえ」とい
う闘争心理に火が付き、タウランが起こる。そんな状況は二輪ギャングの真骨頂でもある
から、敵を求めて果し合いを行いたい連中が続々とオンザロードを行うようになり、警察
がサウルオンザロード禁止を宣告したから、それは闇の不法行為に変質した。なにしろ宗
教上の本来の目的は看板だけで、やっていることは背教行為なのだから、禁止されるのが
当然だろう。


断食月は夜間の活動が増えることから、日中の活動に変化がもたらされ、交通渋滞のピー
ク時間さえもが変化する。国家公務員の就業時間は午前7時半から16時までだが、20
19年ラマダン期間中は午前8時から15時までに変更された。そのために出勤ピーク時
間帯は首都圏郊外部で5時半から6時に、都内は6時半に変化している。

もちろん州知事がそれとは異なる決まりを定めることも可能であり、バンテン州は午前6
時から12時半までと独自の時間帯で動いている。官庁街オフィス街は出勤退勤時の交通
渋滞、伝統パサルは朝の買い物時間、モダンマーケットや食堂街はブカプアサ時、モスク
周辺は礼拝時、ビックリパサルや住宅地区は夜間といった交通渋滞時間の分散も起こって
いる。

特にブカプアサを自宅で行い人たちが起こす交通渋滞は15時ごろから始まり、モダンマ
ーケットや食堂街でブカプアサを行う人たちは日没前ごろから21〜22時ごろまで、少
し緩やかな交通渋滞を持続させることになりそう。

またラマダン月第四週目は帰省するひとびとが帰省もしくはその準備行動を開始すること
から、渋滞箇所はそれに関連するところに移動する傾向が始まり、それまでの渋滞箇所は
空き始めることが見込まれる、と交通専門家は語っている。