「首都オフィススペース事情」(2019年05月20日) ジャカルタのオフィススペース需要は顕著な伸びが見られない一方、新たなオフィスビル がどんどん増加しているために供給が高まっており、スペース稼働率は低下の一途をたど っている。この状況は2021年まで継続するものと関係者は見ている。 コリエールズインターナショナルインドネシアのデータによれば、ジャカルタの2019 年オフィススペース新規供給量は14のオフィスビルプロジェクトによる678,520 平米であり、2021年までには145万平米が市場に供給されると見積もられている。 CBDエリアが903,840平米、非CBDエリアが552,729平米という内訳にな っていて、オーナーは建設延期が難しい事情を抱えているため、その数値が実現する可能 性は高いとのことだ。 都内CBDエリアというのは、タムリン・スディルマン通り、ラスナサイッ通り、メガクニ ガン・ガトッスブロト通り・スディルマンビジネスセンター地区を指している。 19年Q1のCBDエリアオフィススペース稼働率は82.5%で、前年同期から1.4% 上昇した。だがビルによっては30〜50%というところも見られる。 非CBDエリアは84.1%で前年同期から0.3%低下した。既に二年間に渡って過剰供 給が市場を抑圧しており、この状況はまだまだ継続するにちがいない。 需要サイドの伸びがはかばかしくないのはグローバル経済成長の鈍化と米中通商摩擦がア ジア域内経済を抑え込んでいるためだ。その結果、ジャカルタばかりか、メダンやスラバ ヤでもオフィススペース稼働は低下現象が見られている。 従来のオフィスビル建設は大きい需要を当て込んで行われてきたもので、現在起こってい る状況とは経営シナリオが大幅に異なっている。現在の新規ビルオーナーはその狂いをツ ギハギしながら対応していかなければならない。オフィスビル建設コンセプトは今後、大 きく変わっていくにちがいない、とコリエールズ役員は述べている。 供給過多になれば市場価格が暴落するのがインドネシア経済の常だ。CBD地区内のA級プ レミアムオフィスビルさえ、その流れに逆らうことはできない。ハイクラスの新規ビルに とっては、相場を下回る値付けをしてでもスペース稼働を実現させなければ、宝の持ち腐 れになってしまう。現在のCBD地区内高級物件は平米当たりの賃貸料金が25〜30万ル ピアで、これは一年前から20〜25%ダウンしている。オフィス需要が最盛期だった2 011〜14年ごろの相場は、平米当たり賃貸料金が45〜65万ルピアにのぼっていた のである。 この状況は賃貸契約更新でテナント側を優位に立たせ、料金引き下げかそれとも条件のよ い新ビルに移るかという交渉が増加し、またこれまで複数の部門が同一ビル内に入り切れ なかったのをひとつのビル内にまとめるというチャンスを得た企業もある。 これまで売り手市場の趣が強かったジャカルタのオフィススペース市場にバランスの逆転 が起こり始めており、今後数年間のうちに新たな均衡点が出現するものと業界オブザーバ ーは見ている。