「プルンプアン(3)」(2019年05月22日)

ところがプルンプアンは悪い女に使われ、ワニタは良い女に使われただけかというと、そ
う単純でもない。婦人警官はpolisi wanita略語でpolwanというのを国家警察は正式呼称と
したが、娼婦にもwanitaが使われてwanita penghiburやwanita  tuna susila(WTS)という
語で一般化している。もちろんwanitaをperempuanに置き換えて使うひともいる。

ちなみに国家警察が婦人警官の制度を設けたのは1966年で、初代婦警部隊は厳選され
た粒よりの女性たちが勢ぞろいしたと言われている。最初の任務は交通整理であり、相手
がほとんど男性運転者なのだから男性警官よりはかの女たちのほうが和らいだ雰囲気で道
路上の秩序立てを進める効果があったようだ。

婦警たちがその日の業務を終え、更に夜まで教育指導を受けてから自宅に帰る途中のチャ
ワン交差点で21時ごろ、バスから降りたふたりの婦警を若者たちが取り囲んだ。かの
女たちは私服だったから、若者たちも甘く見たにちがいない。

夜中に若い女性が男性の保護なしに街中にいれば若い男どもがちょっかいをかけてくるの
が、いまだにあまり変わらないインドネシアの風景である。そういうものが常識の夜の街
中に貞淑な「良い」女は男性のガードなしに出て来ないものであり、その常識を冒して出
てきている女たちは「悪い」女なのだから、ひょっとすると性的な慰安を楽しめるかもし
れないという期待が男たちに湧く。

若者のひとりが吸っていたタバコを女性のひとりに投げた。怒った女性は拳銃をその男に
突き付けたそうだ。一瞬で形勢は逆転し、若者たちは油を絞られる結末となったことが婦
警にからむ当時の話題のひとつになった。


そういうのんびりした時代はもう昔語りで、最近では反テロ特殊分団デンスス88にまで
女性隊員が加わって完全武装したカッコよい姿を見せている。格闘技に憧れる女性はデン
スス88に入隊するとよい。

話を戻すと、日本軍政がプルンプアンという語の持っていた品性をぶち壊してしまったと
いう論説を読んで、わたしは何故か終戦後に流行した米人駐留兵を相手にする娼婦が日本
でパンパンと呼ばれていたことを思い出した。パンパンの語源は諸説芬々なのだが、その
中のひとつにインドネシア語のプルンプアンが語源だという説があり、わたしはこれまで
その説を眉唾視していたのだが、その論説がわたしの先入観を洗い流した。これは可能性
に関する話であって、可能性ゼロが数十%まで上昇してきたということを言っている。確
信したわけでは決してないから、誤解しないでいただきたい。[ 続く ]