「ナシチャラ」(2019年05月31日)

北マルク州西ハルマヘラ県のガムタラ部落では、サフSahu族がニパササドnipah sasado
と呼ぶニッパヤシで葺かれた伝統家屋の屋根を葺き替える際に、部落民が集まってゴトン
ロヨン方式で作業を行う。大勢の人間が集まって共同作業が行われるとき、男たちは力仕
事を行い、女たちは晴れの食事を用意して、繁華な賑わいの中で食事する。それが祝い事
でなくて何だろうか?

ガムタラ部落の女たちは部落で催されるさまざまな祝祭に、ナシチャラnasi calaを60本
も用意する。ナシチャラとは、もち米でない普通の米を竹筒にいれて炊く調理法で作られ
た飯なのだ。

ナシチャラはルマンlemangでなく、ロントンlongongなのである。バナナの葉で包んで竹
筒に入れられるのは、もち米でなくて普通の米であり、ココナツミルクも使われない。

バナナの葉は特にしなりの良いワナンwananバナナ葉であり、竹も節の間隔が1メートル
もあるロウロウ竹bambu lou-louが使われる。米も部落で作られる最高品質の、先祖代々
から畑で育てられているものだ。

洗った米は広げたバナナ葉の軸の左右に長く置かれ、二筋の長い米の列はそれぞれ葉の縁
から巻き込まれて、葉軸を中心にしたふたつの長い巻物の形に作られる。ナシチャラが双
子飯nasi kembarと別称されるゆえんだ。

バナナの葉の巻物は慎重に竹筒に差し込まれ、最後に竹筒の上端開口部はバナナの葉でふ
たがなされて、火で焙られる。火のそばに置かれた支え木に立てかけられて、長時間熱せ
られるのである。

ナシチャラはロントンであるため、食事としておかずと共に供せられる。サフ族は何世紀
にも渡って伝承されてきたこの宴に、ヤシ酒を飲み、豪勢なおかずをナシチャラと共に満
喫するのである。