「帰省逆流上京者(後)」(2019年06月25日)

具体化された目的がなく、ただ何となく首都に住めばなんとかなるだろう、という夢のよ
うなひとびとは、都行政が移住を拒否する。何の技能も持たず教育レベルも低い人間が都
市に流入することによるスラム化や犯罪多発という現象を抑え込むために、現在都庁は就
職が確定している者および技能と学歴のある者の就職活動のための移住を認める方針にし
ており、そうでない者は厳しい対応が上京者を待ち受けているのである。憲法はあっても、
言うは易くが実情なのである。

インドネシアの行政は社会福祉障害者(penyandang masalah kesejahteraan sosial = 
PMKS)という概念を用いて、国民の福祉向上を図っている。その中に浮浪者・乞食・売春
婦などが含まれていて、街中の秩序を乱す存在と見られるがためにそれを街中から一掃す
ることがPMKS対策の中に含められ、下手をすると基本的人権に抵触するかもしれない
印象が生じている。憲法はあっても、依然として言うは易くが実情なのである。
ともあれ、社会福祉障害者の詳細説明は次の記事をご参照ください。
「社会福祉障害者(前)」(2017年10月12日)
http://indojoho.ciao.jp/2017/1012_2.htm
「社会福祉障害者(後)」(2017年10月13日)
http://indojoho.ciao.jp/2017/1013_2.htm

都庁が移住を認めない人間は本来的に仕事口が得にくい人間であり、必然的に犯罪者・浮
浪者・乞食・売春婦の予備軍となっていく。だからそのようなカテゴリーの対象者である
ことが判明した上京者に対して都庁は、保護更生院に入って職業訓練を受けるか、それと
も故郷へ送還されるか、という選択を迫ることになる。


ルバラン明けの一週間後、都内の住民福祉保護更生施設は収容者で溢れかえっている。都
庁社会局社会リハビリ担当ヘッドは、収容者のほとんどはジャカルタ外出身者だと語った。
東ジャカルタ市バグンダヤ第二更生院では、定員5百人に対して556人、定員350人
の西ジャカルタ市ササナ厚生院には390人が収容されている。

これまで都庁が行って来た住民福祉政策プログラムが奏功して、都民の生活は楽になって
きていることが、更生院に収容される都民が減っていること、つまりPMKSに身を落と
してまで生活を維持しなければならない状況の都民が少なくなっている事実からうかがい
知ることができる。

アニス・バスウェダン都知事は上京者制限に不賛成であると自分の信条を語る。
「わたしは平等主義でものごとに当たりたい。インドネシア国民ならだれでもが好きな都
会に出て切磋琢磨し、一旗揚げて成功を競い合い、より良い暮らしを獲得する機会が与え
られるのがあるべき姿だ。」

そのため、ルバラン明け上京者への現場対策としてこれまで毎年行われていた駅やターミ
ナルでの検問および家庭訪問して該当者を見つけ出す遵法作戦は廃止されている。そうは
言っても都内に社会福祉障害者を野放図に増やすことなどできるはずもなく、実態として
は保護されて更生院に収容される者があふれている状況になっているのである。[ 完 ]