「月給1千万ルピアのテロリスト(後)」(2019年07月16日) 従来テロ組織が頼って来た資金源のひとつが寄付金だ。インドネシアで反テロ法ができる までは、テロリスト組織と目されている団体に一般企業が堂々と献金を行っていた。その 構図は既にインドネシアから消滅したが、果たして実態までが本当に消滅しているのかど うか? PPATK(通貨取引分析報告センター)がコルプシ犯罪の資金の流れと同様にテロ資金 の流れにも目を光らせているのだが、あの手この手の防止と摘発の仕組みをかいくぐって 汚職資金移動がいまだに続いている実情を見る限り、テロ資金だけが動きを封じられてい るとは考えにくい。 おまけに国内ばかりか、海外からも寄付名目の資金は入って来るのである。たとえば、2 016年8月に摘発されたバタム島の地元テロ組織カティバゴンゴンルブスはアルカイダ に連なるウイグル人テロ組織トルキスタンイスラム党から2015年に資金を受け取った。 その資金はウイグル人テロリストふたりを中部スラウェシ州ポソの東インドネシアムジャ ヒディンに送り届ける依頼を受けた上で与えられたものだった。 カティバゴンゴンルブスはダエシュ/ISISに忠誠を誓っており、ダエシュ系であるの は間違いないのだが、現場テロリストたちにとってはアルカイダもダエシュも同じ仲間と いう意識の方が強いのかもしれない。 PPATKセンター長はテログループの資金源について、外国からの送金、犯罪成果、特 定財団等が組織活動の中で行う粉飾方法での支払い、ソスメドを使った寄付金集めなどが 主流をなしており、それらの資金は銃器購入や爆弾製造の費用に充てられている、と語っ ている。 テログループへの資金流入は、口座への入金額の多寡をめどにしてはならないそうだ。と いうのは、たいして大きくない金額が継続的に送られて来るケースがあるためで、そのよ うな送金者への警戒も欠かせないものになっている。 合法ビジネスにテロ組織が吸い付いている状態は、公式なザカート運営団体やプサントレ ン塾の合法経済活動に紛れ込んで行われているケースがあるように、決して珍しいもので はない、とインドネシア大学研究者は述べている。 テロ組織が合法ビジネス分野で企業化することは、組織運営面における経済性にたいへん 有利な状況をもたらすことになる。巨大な資金が取り扱えることで、メンバー個々人の生 活を安定させ、没したメンバーへの福利厚生を確保でき、一般企業と同じような安定した 組織構成を実現できるのである。政府公安関係者にはまた新たな対策が必要になって来る にちがいあるまい。[ 完 ]