「高級宅地売買詐欺」(2019年08月15日)

2019年3月、V氏は南ジャカルタ市パサルミングの1,431平米の宅地を売却しよ
うとして、買い手を求めた。買い手が付いて、D氏(女性)との間で150億ルピアの合
意がなされた。D氏はさっそく5億ルピアの手付金をV氏に渡した。

インドネシアの土地売買は土地証書作成官PPATの資格を持つ公証人を絡めて行われること
になっている。D氏はV氏を自分の知り合いのPPAT公証人事務所に連れて行き、売買手続
きを開始した。

V氏が持っているV氏名義の所有権付き土地証書は、国土庁で名義変更がなされることに
なる。その前にPPATはその土地証書が偽造品でないことを国土庁に確認しなければならな
い。

3月12日、V氏は土地証書・建築許可書IMB・土地建物税納税証PBB・住民証明書KTP・
家族証書KKなど必要書類一式を南ジャカルタ市イスカンダルシャ通りのウィスマイスカン
ダルシャWisma Iskandarsyah内に事務所を構えるPPATのイドハム氏に委ねた。ウィスマイ
スカンダルシャは4階建てのオフィスビルであり、複数の公証人がそこにオフィスを開い
ている。

ただしV氏が何度かイドハム氏の事務所を訪問したが、そのたびにイドハム氏は外出して
おり、売買手続きの進行はイドハム氏の部下であるR氏が世話をした。イドハム氏は都議
会議員であるために、たいへん多忙なのだというのがR氏の説明だった。

4月6日、PPATは土地売買証書を作成し、V氏とD氏は証書にサインした。D氏は10日
以内に全額支払うことを約束した。ところが10日以内に支払われるどころか、10日を
過ぎても支払いがなされない。V氏はD氏を探したが、連絡がつかない。

自分の土地証書が不安になり、V氏は国土庁に問い合わせをかけた。そして、その返事を
聞いてびっくり仰天したのである。なんとかれの土地証書は既にD氏に名義変更がなされ、
さらにとある金融コペラシがD氏に融資した50億ルピアの抵当にされているというのだ。

V氏はさっそく警察に訴え、警察はその高級住宅地詐欺グループ5人をしばらくして逮捕
した。売り手を信用させるために公証人事務所を借りていたことが、一味の追跡を容易に
したようだ。

Dはかつて類似の詐欺犯罪を行って入獄していた前科者で、イドハム氏は実在する公証人
だが、この一味とは関係がなく、ただ名前を騙るために使われたに過ぎないらしい。この
詐欺グループの被害者は三人が名乗り出ており、被害総額は2,140億ルピアに上って
いる。

警察はこの一味以外にも高級住宅地オーナーを狙う複数の詐欺グループが暗躍していると
見ており、高額な宅地売却は十二分に警戒するよう呼び掛けている。逮捕された一味は公
証人を偽装して被害者から土地証書を預かったが、土地証書の真贋チェックを買い手が行
い、いや行うフリをしてしばらく証書を手元に置き、オーナーに返却する際に偽造品にす
り替える手口を使う者もあるとのことだ。