「アセアン内で自由往来」(2019年08月16日)

アセアン域内諸国の国民は他のアセアンメンバー国にヴィザなしで出入りできる。インド
ネシアのリアウ島嶼州バタム島住民は、シンガポールやジョホールバルとの間を往復する
商業航路船舶でいつでも海を渡ることができるのである。

バタム島からほど近いブラカンバダン島に住むシャムシナルさん63歳は、昔はもっと簡
便だったと物語る。「昔は、ブラカンパダンの者はみんな、自分の船を漕いでシンガポー
ルやジョホールバルに渡ってましたよ。同じ文化だし、国境監視も今ほど厳しくなかった
ですからね。」

でも今はそうはいかない。渡航船に乗って入国審査ポイントのある港へ行き、パスポート
を提示しなければ、いくらヴィザフリーだと言っても入国させてもらえない。

シャムシナルさんは毎週ジョホールバルへ行く渡航船に乗る。一日に何度も往復するその
渡航船に乗れば、2時間でジョホールバルに着く。かれはジョホールバルで買い物をする
のだ。トレンガヌのソンケッsongketをはじめ、さまざまなムラユの衣服を買い集め、そ
れを持ち帰ってブラカンパダンで売る。

シャムシナルさんの父親はマラッカの人間で、そのためにマレーシアには親戚がたくさん
いる。「マレーシアへ行くと、言葉がよく似ているから、まるで故郷に帰ったような気が
する。」とシャムシナルさんは語る。


バタムに住んで民間会社に勤めているエミルナさん31歳も、頻繁に渡航船でシンガポー
ルに渡る。「シンガポールはいろんな商品の発売が早くて、おまけに割引も半端じゃない
です。シンガポールは安全で秩序だってるから、町で遊んで、いい品物を見つけたら買っ
て帰ります。自分が使うものもあるし、ほかの人に売るものもある。」

かの女がインドネシアに持ち帰るものは化粧品・衣服・靴などだが、時には自転車のよう
なものを買って帰ることもある。おかげで帰りの船に乗るときには、トランクはパンパン。


インドネシア人だけがそのようなことをしているわけでは決してない。シンガポール人も
マレーシア人も、みな同じようなことをしているのだ。浴用品・スナック類などのように
品物によっては、バタムでの価格がもっとも廉いものもある。そういう品物をシンガポー
ル人もマレーシア人もバタムにやってきてショッピングする。

バタムからシンガポールやジョホールバルに向かう渡航船には、週末になるとインドネシ
アのスーパーマーケットのロゴが印刷されたビニール袋を抱えている乗客が船内に散見さ
れるのである。