「インドネシア語を世界に広げる」(2019年08月21日)

東南アジア諸国をはじめ、中国・ウズベキスタン・ロシア・フランス・米国・エジプト・
インドなど18カ国にあるインドネシア大使館がそれぞれの国のインドネシア語学習者に
対して個々に行ったインドネシア語の弁論大会と討論会で優秀と評価されたひとびと34
人がジャカルタに招かれ、2019年8月15日にインドネシア政府教育文化省国際企画
協力局が中心になって開催したインドネシア語の弁論・語り・討論大会でインドネシア語
の実力を披露した。

この催事は今回で5度目。出場者34人は年齢が18歳から30歳のひとびとで、今年は
toleransiがテーマに与えられ、トレランシという角度から眺めたインドネシアの印象を
15分間のスピーチにまとめて弁じていた。スピーチが終わるとインドネシア人審査団と
の間で質疑応答が行われ、インドネシア語による議論の腕前も審査された。


ちなみにインドネシア語のtoleransiは寛容や寛大さという意味にも使われるが昨今のイ
ンドネシア文化の中では、異なる人種・種族・宗教・文化などの入り混じった複合国家で
あるインドネシア国民がそれらのアイデンティティにまつわる差異を問題にせず、同じ民
族の子であり同じ国民であるという同一性を基盤において、異なる要素を持つ他者同士が
相互に尊重しあう姿勢を指してより頻繁に用いられている。つまり「他者尊重」がその意
味だ。

主催者がトレランシをテーマに選択したのは、インドネシアという複合国家が分裂の方向
に決して動かず、国民がトレランシを踏まえて統一国家を維持し続けるよう努めている事
実を国際社会により広く訴えたいという希望の表れだった。

オーストラリア代表者はそのスピーチの中で、オーストラリア国民のインドネシアに対す
るイメージは政治情勢にとても強く左右されている、と語った。「さまざまな報道記事は
あたかもインドネシア人が種族や宗教の差異にきわめて不寛容であるような印象を国民に
もたらしており、その結果オーストラリア国民の中にインドネシアへ行くことを怖れるひ
ともいます。しかしわたしはここへ来てみて、インドネシア人は一般的にとても親切で、
よい人たちだということを実感しました。」


審査員のひとりを務めた書籍言語開発庁言語外交戦略開発センター長は、外国人のインド
ネシア語使用能力とスピーチ内容は回を重ねるたびに向上が実感されると次のように述べ
た。
「2億5千万人のインドネシア語話者が国内にいるという事実は、インドネシア語が世界
語として認められておかしくない状況を生み出しています。あとは外国人のインドネシア
語話者をもっと増やしていくことでしょう。たとえば2019年2月にインドネシア国語
開発機関がオーストラリアで行ったセミナーは、参加者の大多数がオーストラリア人だっ
たにもかかわらず、議事進行はすべてインドネシア語が使われました。中国で行われた中
国人インドネシア語教師のセミナーでも、まったく同じでした。
教育文化省が行っている外国人留学生制度ダルマシスワの経験者は9千人に達しています
し、海外の大学でもインドネシア語を取り上げるところが増加しています。ロシアのアジ
アアフリカ学院もそのひとつだし、ウズベキスタンにはインドネシア語を教える大学が三
つできています。」

インドネシア語を世界語にするという目標は、国語行政関係者の間での念願になっている。
具体的には、インドネシア共和国建国百周年に当たる2045年にインドネシア語を国連
の公用語のひとつにするという目標だ。現在、英語、フランス語、ロシア語、中国語、ス
ペイン語、アラビア語で占められている国連公用語にインドネシア語を加えるという目標
実現のために、諸外国でインドネシア語学習熱を高める努力がいま、呼び掛けられている。